ルンバのアイロボット社破産から学ぶコモディティ化の脅威と対策

お掃除ロボット「ルンバ」で知られる米アイロボット社が破産することになりました(参考:ルンバの米アイロボットCEO、倒産原因は「技術面で中国勢に4年遅れ」 - 日本経済新聞)。「コモディティ化」の恐ろしさと、現代における競争戦略の難しさについて痛感するニュースだったかと思います。かつては市場を独占していたトップランナーが、なぜ破産に追い込まれたのでしょうか?その背景には中国企業による新規参入があります。

今回はこのルンバのニュースを元に、既存のフレームワークが通用しにくくなっている現状について考察します。

アイロボット社の破産とコモディティ化

報道によりますとアイロボット社が破産に至った主な理由は、中国企業による低価格かつ高性能な製品に押され、市場シェアを大幅に失ったことにあります。これは、特定の製品が一般化し、差別化が困難になる「コモディティ化」の典型的な事例と言っていいのではないかと思います。

コモディティ化が進むと、製品は「唯一無二の価値」から「どこでも買える汎用品」へと変化します。その結果、激しい価格競争が巻き起こり、ブランド力だけでは利益を維持できなくなります。この現象はロボット掃除機に限らず、スマートフォンやパソコン、さらにはコンビニのホットスナックや牛丼チェーンなど、私たちの身近なあらゆる市場で起きています。

現代における参入障壁の脆さ

企業の競争戦略としてよく知られる「ファイブフォース分析」では、新規参入の脅威を防ぐために「参入障壁」を高くすることが重要だと説かれています。しかし、現代ではこの参入障壁を築くことが極めて難しくなっています。

  • 特許による保護の限界…かつては特許で技術を縛ることが有効でした。ですが、現在では少し異なるアプローチで同様の機能を実現する技術が次々と開発されています。
  • 技術のコモディティ化…スマートフォンなどの複雑な製品であっても、設計や製造を請け負う工場が世界中に存在します。新興企業でも比較的容易に市場参入が可能になっています。
  • ルールの無効化…政府と連携して有利なルールを作る(ロビー活動)手法も、必ずしも成功するとは限りません。例えば欧州の電気自動車推進ルールも、結果的には安価で高品質な中国製EVのシェア拡大を許す形となり、ルールの撤廃や見直しを余儀なくされています。

このように、かつての定石であった「参入を防ぐ」という戦略は、テクノロジーの進歩とグローバル化によって通用しにくくなっています。

ビジネスパーソンが取るべきこれからの戦略

アイロボット社のような有名企業であっても、コモディティ化の波に飲まれれば衰退は避けられません。アメリカでは、サービスが均一化しやすい航空会社などが何度も破産と再建を繰り返しており、コモディティ化による破産はある種「避けられない新陳代謝」とも捉えられています。

これからの時代、企業が生き残るためには以下の視点が必要なのではないでしょうか。

  1. 圧倒的なブランディング…参入されても選ばれ続けるための強力なブランド価値を構築すること。
  2. 絶え間ない高機能化の追求…他社が追いつけないスピードで製品をアップデートし続けること。
  3. ポートフォリオ戦略…一つの市場に固執せず、常に新しい市場を切り拓き、複数の収益源を持つこと。

コモディティ化は消費者にとっては「安く良いものが手に入る」というメリットがありますが、ビジネスの現場では常にその脅威にさらされていることを自覚しなければなりません。変化の激しい時代において、過去の成功体験や古いフレームワークに頼るのではなく、変化を前提とした柔軟な戦略が必要とされています。

投稿者プロフィール

松本 孝行
松本 孝行代表取締役
兵庫県伊丹市出身

2006年、立命館大学経営学部卒業後、パソコンソフトの卸売会社、総合商社子会社に就職し、2008年に独立。

2011年頃からSEO対策・アフィリエイト用の文章制作から、独学でリスティング広告やアクセス解析、SNS広告などを学び、サービスを展開。

短期大学の情報処理講師や職業訓練校のWebサイト制作クラス・ECマーケティングクラスなどで講師を担当。

現在は株式会社キヨスル代表取締役として、Webマーケティングをデザインすることでクライアントのビジネスに貢献する。

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