刈り取り広告のメリットとデメリット。なぜ必ず頭打ちになるのか

Web広告をやっていると「刈り取り」という言葉が出てきます。

刈り取り施策や刈り取り広告と呼ばれるものはどういうものか?そして、それ以外の広告施策との違い等について、ご紹介します。

刈り取り広告とは

刈り取り広告とは、すでに買う気がある人、いますぐ欲しいという人だけを直接取りに行く広告のことです。「顕在層」と言われる買ってくれる層だけを狙います。

具体的には次のようなものが該当します。

  • 指名検索
    • 商品名や会社名での検索です。たとえば「ルンバ」「アイロボット」と検索しているは「ロボット掃除機」で調べている人よりも、ルンバを購入してくれる可能性が高いと考えられます
  • 比較・検討キーワード
    • 「〇〇 おすすめ」「〇〇 料金」などで調べます。価格.comのような比較サイトはまさにこの層を集めていて、購入したことがある人も多いのではないでしょうか。
  • リターゲティング
    • 一度サイトを見た人に追いかけて出す広告です。昔よりも効果が小さくなっています。

いま探している人に出す広告なので、購入までの距離が近く、成果が出やすいという特徴が刈り取り広告にはあります。

刈り取りから始めるのは正しい

そして、Web広告を始めるなら刈り取り広告から始めるのが正しいとされています。顕在層から狙うのは、広告でもマーケティングでも基本です。下記のような理由から、その他の広告よりも効果的です。

  • 成果がすぐ出るので、売上が立ち、利益が上がる
  • 費用対効果が見やすい(広告費をいくら使って、いくら売上が上がったかが分かる)
  • 予算が少なくても始められるため、中小企業でも始めやすいです。

認知獲得の広告やSEOでは、ここまで分かりやすく成果がすぐに出ません。刈り取りという行為を一番最初にやることは間違っていません。

ただし刈り取りは必ず逓減する

問題は、刈り取りだけをやっていればいいのかという点です。

刈り取り施策はほぼ必ず逓減します。会社名や商品名などの「刈り取り広告」に使える検索キーワードは、限りがあります。何かきっかけがあれば右肩上がりになることもありますが、特に何もなければ横ばいか、少しずつユーザーは少なくなっていきます。

その決まった枠の中に、他社も一緒に入札してきます。すると当然、クリック単価が上がっていきます。

そして最終的に「刈り取りキーワードで調べるユーザー(顕在層)」を全部取り切ってしまえば、そこから先の需要はありません。いくら広告を出しても売れないという状況になります。刈り取ったあとに和球打ちになるのが、刈り取り広告の弱点です。

いま買う人は全体の5%しかいない

そもそも、刈り取りで取れる人はどれくらいいるのでしょうか。

「95:5ルール」というものがあります。ジョン・ドーズ教授が研究して発表した内容で、いますぐ欲しいという顕在客は全体の5%しかいないというものです。残りの95%は、買わないか、買うとしても今ではない人たちです。

(参考:訪問者の95%は“今すぐ客”ではない。 BtoBマーケの鉄則「95:5ルール」から学ぶ、商談を2倍にするリードの選び方 | URUTEQ)

つまり刈り取り広告は、この5%という少ない枠を競合と取り合っているのです。95%の人たちはその場で欲しいわけではないので、そもそも検索しませんし、広告を見ても反応しないのが当たり前です。

95対5ということは、20倍近い差があります。かなりの数が「買わない状態」で残っているわけです。いまいるお客さんを取り切ったあと、残り95%には刈り取り施策では届きません。

成長したベンチャー企業がテレビCMやタクシー広告を始める理由

ベンチャー企業が成長してくると、タクシー広告やテレビCM、ビルの広告などをやり始める傾向があります。これは刈り取りをしきってしまい、新しいお客さんが取れなくなってきたためです。

BtoBでもBtoCでも起こることで、新しいお客さんを開拓するには、こちらから情報を届けるしかありません。顕在客出ないユーザーは能動的に検索しないのです。情報を届けられる施策として、テレビCMやタクシー広告などの「認知施策」があります。タクシー広告は決裁者や年収の高い層に届きやすいと言われています。

ここでポイントになるのが指名検索です。刈り取り広告だけだと指名検索はずっと横ばいですが、認知施策をやると指名検索もつられて上がります。パイそのものを増やせるのです。刈り取りにもプラスになるので、大きくなったベンチャー企業は「認知施策」を行うのです。

配分は6対4と言われる

予算配分については、ブランド・認知に6割、刈り取りに4割がよいと言われています。

なぜブランド・認知のほうが高いのでしょうか。テレビCMやタクシー広告の単価を見ていただくと分かりますが、数百万円から数千万円の世界で、100万円を切ることはほとんどありません。多くの人に届けないといけないので、どうしても高くなるのです。

一方で刈り取りは、数万円から始められる検索広告があります。中小企業でもできる分、予算は下がります。結果として、認知側に多く配分せざるを得ないという構造です。

ただしこの6対4は、業種やお客様の状況、どの段階にいるかによってまったく変わります。認知に少しだけ使ったら刈り取りが一気に伸びることもあります。やりながら調整していくしかない部分です。

中小企業は時間と労力で認知を作る

中小企業はテレビCMを出せません。ではどうするか、基本は時間と労力で認知を作っていくことです。

時間と労力をお金で買っているのが大企業です。お金で買えないのであれば、時間と労力を使うしかありません。

  • YouTubeやSNSでの発信
  • ブログやコンテンツの蓄積
  • 展示会・セミナー・勉強会に顔を出す
  • 紹介してくれる人を増やし、人脈を作る

これをいつやるかですが、すぐに始めたほうがよいと考えています。刈り取りが終わってからではなく、刈り取り広告と一緒に進めるのです。

刈り取りはどこかで必ず尽きます。ストックが尽きる前に認知を増やしておかないと間に合いません。

刈り取りが頭打ちになったサイン

頭打ちのサインは分かりやすく出ます。

予算を増やせば、コンバージョン数は増えていくのが基本です。コンバージョン率が決まっている中で予算を増やすのですから、当然そうなります。ところがどこかのタイミングで、予算を増やしてもコンバージョン数が増えず、コンバージョン率が悪くなるときが来ます。

このときは、コンバージョン率が一番よいところで予算を止めるのがよいでしょう。そこが刈り取り施策の限界ということです。

ほかにも、CPAが上がっていく、コンバージョン率が下がるといったサインがあります。Google広告であれば「オークション分析」で、自分がどれだけ広告枠に出せているかを確認できます。上のほうにあるようなら、ほぼ取り切っている可能性が高いと考えられます。

まとめ

  • 刈り取り広告は成果が出やすく、中小企業も大企業もここから始めるべき施策
  • ただし、今すぐ買う人は全体の5%しかいないため、必ず頭打ちになる
  • 頭打ちになる前に、刈り取りと並行して認知施策を始めておく

中小企業の方は営業を受けることも多いと思いますが、やけに金額が高いものは、たいてい認知系の広告や施策です。そこには一旦お金をかけず、まず刈り取り広告から始めましょう。それと同時に労力をかけて認知を作っていくことをおすすめします。

大きなお金を一度に投じて一気に有名になり、それで儲かるということは、いまの時代には出来ないと思ったほうが良いでしょう。

投稿者プロフィール

松本 孝行
松本 孝行代表取締役
兵庫県伊丹市出身

2006年、立命館大学経営学部卒業後、パソコンソフトの卸売会社、総合商社子会社に就職し、2008年に独立。

2011年頃からSEO対策・アフィリエイト用の文章制作から、独学でリスティング広告やアクセス解析、SNS広告などを学び、サービスを展開。

短期大学の情報処理講師や職業訓練校のWebサイト制作クラス・ECマーケティングクラスなどで講師を担当。

現在は株式会社キヨスル代表取締役として、Webマーケティングをデザインすることでクライアントのビジネスに貢献する。