マーケティングの中心はどんな時代も必ず人
収録時はセブンイレブンが自社ECサイト「omni7(オムニ7)」を終了すると発表した時期でした。このオムニというのは、「オムニチャネル」の略語で、オンラインとオフラインの統合を目指す言葉です。
約30年続くオンラインとオフラインの統合
オンラインとオフラインの統合と聞くと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと、「オンオフ問わずに顧客と企業の接点を持つ」という発想です。「実際に店舗に訪れて商品を見たり購入する事」と、「ネットを通して商品等の情報を得たり購入したりする事」のオンオフの垣根なく行う事です。すでに私達の生活に浸透した発想とも言えます。
ですがこの発想は実は、インターネットが登場した頃からすでにありました。当時は「クリック&モルタル」と言われていたものです。この頃はスマートフォン等がなかったので名前が異なりますが、意味はほぼ同じです。
その次は、「O2O(オンライントゥーオフライン)」という言葉に変わりました。このようにオンラインとオフラインの統合という発想は、約30年ほど前から続いています。ですがその30年の間で、上手くいったものとそうでないものがあり、企業は試行錯誤を繰り返しています。
失敗したオムニ7
では、なぜオムニ7は失敗したのでしょうか?
失敗の原因を探ると、「そもそも消費者は本当にオムニ7を求めていたのか?」という部分に辿り着きます。オムニ7に登録するとそのID1つで、イトーヨーカドー・セブンイレブン・赤ちゃん本舗などが使えるようになりますが、結局は「セブンアンドアイホールディングス内のECサイトでしか使えないID」でした。
今時はコンビニ1つをとっても、大手3社がありそれぞれが別々の企業で別々のアプリを運用しています。私自身もよくファミリーマートに行きますので、ファミリーマートのアプリを使用していますが、「運営会社の伊藤忠商事のアプリを使いますか?」と聞かれれば使いません。あくまでファミリーマートによく行くのでアプリを使っているだけで、他のグループ店舗には興味がないからです。
そして、今は様々な企業が独自にアプリを運用する時代で、そのアプリでの会員登録の際にはSNSの紐づけを使う時代です。つまり、わざわざ企業側でIDを統合してもらわずとも、すでに統合されていると言えます。
ですのでオムニ7は、「企業目線で顧客の囲い込みのみを考えた」為に失敗したと言えます。
マーケティングは人が起点
オムニ7の企業目線のみでの顧客囲い込みや近年何かと話題になるビッグデータですが、こういったものは消費者にフォーカスを当てていません。企業側のエゴとも言えます。マーケティングの出発点は必ず人です。ペット用品も機械の部品も、どんな商品も「人間の消費者」に買ってもらいます。
なので、マーケティングではデータはもちろん大事ですが、まずは「消費者に欲しいと思ってもらえる・喜んでもらえる」マーケティングを考えていかなければいけません。企業側の「これがしたい」「あれがしたい」というエゴでやってもマーケティングは上手くいかないと思います。