「値決めは経営」商品・サービスの価格を決定する難しさ

経営において「商品をいくらで売るか?」を決める事はとても重要です。今回は稲盛和夫氏の考えを参考に、値決めとマーケティングについて考えてみたいと思います。

値決めは販売量と利益が最大する点を狙う

稲盛和夫氏は「値決めは経営」という言葉を残しています。これは値決めがそれだけ経営において「重要な意思決定事項」である事を示しています。それだけ難しく、かつ重要でもあるという事です。

稲盛和夫氏はこの値決めを「売れる量・利益が最大になるような値段を見つけ出す事」とも残しています。ただこの売れる量と利益が最大になる価格設定というのはとても難しいものです。例えば、量を増やそうと安売りをすれば利益があまり出ません。反対に、利益を増やそうと単価を上げると販売量が増えません。

ですので、双方が最大の場所を見極める事はとても難しく、一社員でできる事でもありません。だからこそ、経営者が責任を持って決めなければいけません。

マーケティング的な狙いのあるフリーミアムと安売り

しかしこの基本とは異なる値決めがされているものもあります。

1つは「フリーミアム」です。聞き馴染みが薄い方も多いかもしれませんが、私達が普段よく使っているものでもあります。フリーミアムはスマホのアプリ等によく見られる形で、基本は無料で、更に機能やサービスを求める場合のみ有料とするものです。

フリーミアムでは有料ユーザーは全体でどれくらいいるのでしょうか?基本プレイ無料のアプリゲームの場合、約5%と言われています。この5%という数字を大きく超えることは難しいでしょう。ですから、5%の有料ユーザー数で利益を出す仕組みが必要になります。全体のユーザー数を増やす事で有料ユーザー数も増えると考えられます。とにかくユーザー数を確保する事で利益を出す仕組みです。

もう1つが「極端な安売りによるシェア拡大」です。これは日本の飲食店によく見られるやり方で様々な場所へ次々と出店したり、広告をたくさん打つ方法です。

最近では、一番分かりやすい例がいきなりステーキでしょう。いきなりステーキはステーキが安く食べられるという触れ込みで、次々と出店して他店の客を奪っていきました。実はこの時点では利益は大きくありませんでしたが、そこから少しずつ価格を上げていき利益を確保しました。はなまるうどんでも同じようなやり方があり、最初は100円という安さを売りに販売して顧客を集めていましたが、シェアを拡大した今は100円では販売していません。

他にも、LPを使った健康食品も同じようなやり方です。最初に費用をつぎ込み大量の広告を出し、顧客が確保できてくると少しずつ利益回収ができる仕組みになっています。

このようにマーケティングの狙いを持った値決めというのが存在します。ただ、基本的に安売りは体力(会社の資本力)がないと続きません。ですので、資金がある企業・プロジェクトなら安売りでのシェア拡大ができますが、そうでない場合は安売りを使うべきではないでしょう。基本的には差別化戦略で、利益を確実に確保する稲盛さんのやり方がよいでしょう。

アンケート通りの金額を支払う顧客はいない

最後に、値決めにおいてもう1つ大事な事があります。顧客へのアンケートです

例えば新しい商品を作り、それをいくらで買いたいかとアンケートを取ります。「1000円」の回答が1番多かったからと言って、1000円で売ると沢山の人がかうでしょうか?アンケートに答えた人は、ほとんど買わないでしょう。アンケートは無料ですが、商品の購入は有料ですので話の次元が違います。実際にお金を払う人とアンケートの結果は違うのです。

アンケート結果がすべてではありませんので、実際にお金を支払った人の行動に沿いましょう。そして、その商品にどれだけの価値があるのかを見極めましょう。