「賞をもらった」「カッコイイデザイン」は現場では求められていない
業界外では知られていませんが、実は広告業界には様々な賞があります。カンヌライオンズなどたくさんの賞があり、電通などの大手広告代理店の若手社員が応募しています。しかし現場で求められるのは賞を取るデザインではありません。
賞をもらった・カッコイイデザインは必要ない
賞をもらう事・応募する事が悪い訳ではありません。最初のうちは作業への慣れとモチベーションの為に挑戦するのはアリだと思います。また、制作をする人間としてカッコイイ・綺麗なデザインや奇抜なアイデアに憧れるのも当然です。私自身もできるのであればそういった物を作りたいと思います。最近では低価格でカッコイイ動画に編集してくれるような業者も増えました。
しかしそれらはマーケティング的な正解ではありません。
マーケティング的な正解を考えるいい材料として、UGC(user generated contents)があります。簡単に言うと、ユーザーが投稿したコンテンツのことを指します。例えばInstagramに投稿した写真はUGCに当たります。このUGCの対局にあるのが、業者やデザイナーが制作したコンテンツになります。UGCは専門家が作ったコンテンツよりも成果が上回った、という事例が多いのです。
このUGCに関してとあるマーケティング会社が話していたペットカメラの話が非常に良い例があります。
ペットカメラと言えば離れた場所からでも自宅のペットの様子を確認できる物として、使われている人も多いのではないでしょうか。そんなペットカメラの広告をSNSで出した際に一番効果があった物が顧客の犬が写った映像だったそうです。またUGCの中で最も効果的だった動画がなぜ一番なのか?はわかりませんでした。利用者の琴線に触れる物があったのでしょう。
ただこの業者はUGCを使う前は広告代理店やデザイナーと相談して良いコンテンツを作ろうとしていました。ただ、役員からは「すぐに始めてすぐに改善してください」ということでUGCに変更して成功しました。UGCは必ずしもかっこいいコンテンツではありませんが、経営層は支持しているのです。つまり、現場で求められているのは「売れるデザイン」だという事です。
どんなにカッコイイ・綺麗なデザインでも売れなければ意味がありません。綺麗なデザインで賞をもらっても、それは現場では求められていません。
マーケティング的な正解=売れるデザイン・売れる動画
最近、YouTubeで動画を視聴していて「同じような編集ばっかりだな」と思った事はありませんか?目を惹くサムネイル、分かりやすいテロップ、そしてダイジェスト編集…。これらに共通する編集をカッコイイかと言われれば、そうではないでしょう。もっとカッコイイ編集の仕方はたくさんあります。それでもそうしないのは、今主流になっている編集が一番視聴回数などを稼げるからです。
縦長のLPサイトなどが未だに残っているのも、あれが売れるから残っています。カッコイイLPで売れるなら、どの企業もデザインを変えます。結局、売れる物がマーケティング的には正解という事になります。
ただ、この「売れる」ということも「期間」によって変わってきます。例えばすぐに売れるというのも大事です。逆に、大きなプロジェクトでは長期に渡って良い影響を与えるものも重要です。ロゴなどのブランディングはまさにそのような「長期で売れる」ことを考えます。例えばGUやユニクロのロゴも長期的に見るとブランディングとして多大な貢献をしています。まさにビジネス・マーケティング的に正解のデザインと言えるでしょう。
現場では「賞をもらったので作らせてください」は余り必要とされないでしょう。「売上を2倍にしました」「100万再生の動画を100個作りました」といった実績が求められています。短期・長期でも売れるコンテンツを作れる事が重要ですので、実績を売り込みましょう。