顧客の創造とはなにか?3つの事例から考える
顧客の創造というのをご存知でしょうか。一見すると経営の話でマーケティングには関係がないと思うかもしれませんが、マーケティングにも非常に役立ちますので知っておくことをおすすめします。
顧客とは商品やサービスにお金を支払ってくれる人
顧客の創造はピーター・ドラッカーが唱えました。「企業の目的は顧客の創造である」と書いています。これはマーケティングにおいても非常に重要な考え方です。
顧客の創造とは、原文では「Create a customer」と書かれており、1人の顧客を作る・1人1人にフォーカスすると言った意味ではないか?と思われます。また、顧客の創造の「顧客」とはどんな人のことでしょうか?顧客、つまりお客様です。これは「商品やサービスに対してお金を支払ってくれる人」を指しています。
つまり商品やサービスを購入してくれない人やお金を支払ってくれない人は顧客ではありません。あくまで商品・サービスを購入してお金を払ってくれる人を創り出すことが目的です。
顧客の創造、3つの事例
では顧客の創造とは具体的にどういうことでしょうか?事例を3つご紹介します。
まずは北極で冷蔵庫を売った事例です。極寒の地に住むエスキモーに冷蔵庫を売った話は有名で、ご存知の人も多いでしょう。一時は営業のバイブルとして本でも語られることが多かったようです。
エスキモーの住む場所はマイナス10~20度が当たり前の場所です。夏場40度近くなる日がある私達が住む場所から見ると、常に寒い場所では冷蔵庫は不要に思えます。しかし営業マンは「物を凍らせない為に冷蔵庫を使いましょう」と提案し、売る事に成功したといいます。エスキモーの土地は常に寒く、基本的にどんな物でも凍ってしまいます。そのため「物を凍らせたくない人」に冷蔵庫の需要が合致したと言う訳です。
私達は冷蔵庫を「物を冷やすための道具」として見ていますが、エスキモーの人達から見ると一定温度に保つ・温めると道具になります。これは冷蔵庫を改良した訳ではなく、視点を変えて冷蔵庫の性能を伝えた事によって営業が成功した例です。顧客の創造は物の価値や機能を、相手の立場で考えて正しく伝える事が大事という事例でした。
2つ目が昆虫食です。昆虫食と言えば一時コオロギなどが話題になりましたが、それ以前から販売しているECサイトがありました。もちろん昆虫食は国や文化によって当たり前の国・地域もあります。ですが、日本ではまだまだゲテモノ扱いの面が強い食品です。
昆虫食を販売しているECサイトは「どういったところで売れているのか?」の調査をしました。すると、繁華街などの夜の街で多く売れている事が判明しました。そこでは酔った人達や騒ぐ人たちが「罰ゲーム用」として購入していたのです。普通に昆虫食として売ると売れません。しかし、罰ゲーム用として販売する事で夜の街以外にも、テレビ・ラジオ・YouTuberなど購入してもらえる層が広がるでしょう。
これは商品・サービスの見方を変えて、別に存在していた需要に合致できた例です。
3つ目はカップヌードルです。元々、カップヌードルは容器や形状加工に費用がかかり、安い商品ではありませんでした。袋麺の後にカップヌードルが発売され、袋麺の3倍の値段と言う事もあり、なかなか売れませんでした。
それを覆したのがあさま山荘事件です。当時、寒い中で対応に当たる警察官に非常食としてカップヌードルが配られました。それを食べる姿が繰り返し報道されたのです。湯気が上がるカップヌードルを食べるその様子に、美味しそうだとみんながこぞって買うようになり、売り上げアップにつながったそうです。外でもお湯とフォークさえあれば食べられると言う「商品の価値」が世間に伝わっていなかった所に、あさま山荘事件の報道でその価値が世間に伝わった訳です。
これは商品の価値を繰り返し伝えて顧客に知ってもらうと言う例です。
顧客の創造の方法はたくさんありますが、今回は分かりやすい3つの例をご紹介しました。見方を変える・市場を見つける・価値を正しく伝える。この3つだけでも知っておくとマーケティングにも非常に役立ちます。