ワークマン女子が失敗したのは女性社員が原因ではない
ワークマンが展開していた女性向け店舗「ワークマン女子」の撤退が決定しました。ネット上では「女性社員が主導したから失敗した」という声も聞かれますが、実際の失敗要因は店舗名にありました。今回はその詳細を分析し、どうすればよかったのかを考察します。
「ワークマン女子」という店舗名が最大の失敗要因
ワークマン女子の最大の問題点は、店舗全体を女性専用にしてしまった点です。プレジデントオンラインの南氏も指摘していますが、「ワークマン女子」という店舗名では男性客が足を運びづらくなるのは明らかでしょう。
参考:https://toyokeizai.net/articles/-/857838?display=b
実際、ユニクロやGU、しまむらなどの成功している衣料品店を見てみると、すべて全世代向けの商品を扱っています。メンズ、レディース、キッズのコーナーを分けて配置し、誰でも気軽に入店できる環境づくりが特徴的です。店舗内を歩けば、若い男性がデニムを選び、その隣で女性がニットを手に取り、子ども連れの家族がキッズコーナーを見て回る光景が日常的に見られます。
一方、ワークマン女子は店舗全体を女性向けにしてしまったため、顧客層を極端に狭めてしまいました。例えるなら、ハニーズやビクトリア・シークレットのような女性専門店と同じ形態です。これでは男性はもちろん、子ども連れの家族も入りづらく、集客面で大きなハンデを背負うリスクがあったのではないでしょうか。
さらに問題なのは、ワークマンというブランド自体が作業着メーカーとして男性客の支持を得ていた点でしょう。既存の男性客が「女性専用店舗」に入りづらいと感じれば、本来取り込めていた顧客まで遠ざけてしまいます。ターゲットを絞りすぎることで、かえって機会損失を生み出してしまったのです。
複雑すぎたブランド戦略が混乱を招いた
もう一つの問題点は、ブランドが4~5つと多すぎた点にあります。成功企業の例として先ほどユニクロとGUを挙げましたが、このファーストリテイリングでさえ、ブランドは2つに絞っているのが現状です。
顧客は「選択肢が多い方が良い」と思いがちですが、実際には選択肢が多すぎると逆に選べなくなってしまいます。心理学ではこれを「決定麻痺」や「選択のパラドックス」と呼びます。ワークマン本体、ワークマンプラス、ワークマン女子と複数ブランドが同時に存在したことで、消費者にとって「どの店舗に行けばいいのか」が分かりにくくなってしまいました。
ワークマンも作業着メインのブランドとカジュアル向けのブランド、この2つ程度に絞るべきだったでしょう。理想的な展開方法は、1つの店舗内に性別ごとのコーナーを設置する形です。例えば、入口付近にトレンド性の高い女性向けアイテムを配置し、奥に作業着や男性向けカジュアルウェアを展開すれば、幅広い顧客にアプローチできます。
お店の動きやすさや商品の配置を工夫すれば、多様な顧客が快適に買い物できる空間を作れます。すでに述べたユニクロがまさにこの戦略で成功しているように、店舗内のゾーニングを明確にすれば、ターゲット層を広げつつも各顧客のニーズにも応じられるでしょう。
失敗の本当の原因は"性別"ではなかった
ネット上では「女性社員が失敗の原因」という論調も見られますが、これは誤解です。女性社員は商品開発や売り場づくりを主導しましたが、店舗全体を女性専用にするという経営判断は、おそらく上層部が下したものでしょう。
実際、ワークマン女子で開発された商品の多くは高い評価を受けていました。機能性とデザイン性を両立させたアイテムは、女性客から支持されていたのです。問題は商品そのものではなく、どう売るかにあったと言えます。
フランチャイズを含む複雑な経営形態も絡んでいるため、単純に誰が悪いという話ではありません。男性でも女性でも優秀な経営者もいれば、そうでない人もいるのが現実です。この失敗を性別のせいにするのは、建設的とは言えません。
重要なのは、この失敗から学ぶことでしょう。ワークマン女子の撤退は、マーケティング戦略における大きな学びとなりました。顧客層を限定しすぎず、幅広い層にアプローチできる店舗展開の重要性を示す事例です。ターゲットを明確にすることと、ターゲットを限定しすぎることは別物だという認識が、今後の小売戦略にも役立つかもしれません。
投稿者プロフィール

- 代表取締役
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兵庫県伊丹市出身
2006年、立命館大学経営学部卒業後、パソコンソフトの卸売会社、総合商社子会社に就職し、2008年に独立。
2011年頃からSEO対策・アフィリエイト用の文章制作から、独学でリスティング広告やアクセス解析、SNS広告などを学び、サービスを展開。
短期大学の情報処理講師や職業訓練校のWebサイト制作クラス・ECマーケティングクラスなどで講師を担当。
現在は株式会社キヨスル代表取締役として、Webマーケティングをデザインすることでクライアントのビジネスに貢献する。
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