ビジネスでは必ずしもキャズムを越える必要はない
皆さんは「キャズム理論」をご存知でしょうか?新しい商品を一番最初に購入する人を「イノベーター」と呼び、このイノベーターに追随して購入する人を「アーリーアダプター」と呼びます。そしてここから残りのその他の一般の人に購入してもらうまでの谷を「キャズム」と呼び、そこをどう越えるかを研究した理論がキャズム理論です。
キャズムを越えたchatGPT
キャズムを越える事はとても重要だと考えられてきました、chatGPTはそれを越えたと感じています。
元々chatGPTは新しい物好きな人が、どんな質問をしたらどんな答えが返ってくるのかという遊び程度で使っていました。しかし今はYouTubeなどの普及によりYouTuberや芸能人がchatGPTを使用して遊ぶ段階になりました。現段階では活用できている人が多いとは言えませんが、活用の一歩手前の遊び段階には入っています。かつ、この使い方がかなり広がってきています。またchatGPTは学習をさせる物ですので、こうして使う人が増える事にもメリットがあります。
そしてこの芸能人が使うか使わないかはキャズムを越えているかどうかのひとつの判断になります。現在のテレビの情報は基本的に遅れています。ネットで流行っているからテレビで取り上げる、という流れがあります。そんなテレビに出ている芸能人がchatGPTを使用する事は、より多くの人(飛びつくのが遅い人々)の使用を促す効果があります。
しかしこのキャズムを越えられなかった物もたくさんあります。最近で言うとメタ社のVRです。キャズムどころかイノベーターにしか相手にされてませんでした。またAppleがVRのガジェットを出しましたが、これもおそらくキャズムを越えないと予想しています。値段も高く、使う理由もあまりありません。
ただこれに関しては「パソコンで言う汎用機になるのでは?」とも考えています。昔、まだまだパソコンが大きかった頃は会社にしかパソコンを置く事ができませんでした。しかし改良を重ねてコンパクトになり、合わせて家庭用のOSも開発された事で一般にも広く普及しました。
これを踏まえて考えると今回のAppleのガジェットも値段は企業向けの値段と言えますので、よりコンパクトに安くして一般家庭への普及を目指す為の第一歩なのではないでしょうか。
(参考:「Apple Vision Pro」の機能、外観、価格--アップル初のAR/VRヘッドセットを知る)
キャズムを越える事=ビジネスの成功ではない
先述の通りキャズムを越えていない商品は少なくありません。例えばスマートスピーカーや照明にプロジェクターを取り付けられるポップインアラジンなども該当するでしょう。使っている人はそこそこいますが、一般家庭の半数以上が使っているかと言えばそうではありません。まだまだキャズムを越えていないと言えます。
ではキャズムを越えているchatGPTは黒字なのかと言うとそうではありません。現在は赤字を垂れ流している状態です。じゃあスマートスピーカーやポップインアラジンは売れていないのかと言うとこちらもそうではありません。何万台と売れており黒字化しています。
実はキャズム理論はビジネスの成功とはまったく関係がないのです。マーケティングでもキャズム理論はよく出てきますが、私はこれに当てはめて考える必要性はないと考えています。ターゲットが何千万人単位ならキャズム理論を考える必要がありますが、例えば1万人であったり、数十社の企業が相手となればキャズムを越える必要はありません。
ビジネスではキャズムを越えるよりも、自社の商品をターゲットにきちんと届ける事が何よりも重要なのです。