スタートアップ向け広告宣伝のキホン【オンラインセミナー書き起こし】

ベンチャー・スタートアップ向けの広告宣伝・プロモーションについてのオンラインセミナーを書き起こしました。インターネット上でもなかなかスタートアップ・ベンチャー向けの広告宣伝方法や販路開拓の方法などがありませんでしたので、こちらで解説させていただきます。Webマーケティング戦略にもつながる内容で、基本を知って事業を加速していただければと思います。

ビジネス目標からマーケティング戦略を考える

まずはWebマーケティングだけでなく、全体のマーケティング戦略を作る必要があります。マーケティング戦略というと難しく思いますが、ビジネスの目標に対してどのような方向性で商品・サービスから広告宣伝までを行うか、その方針を作ります。

IPOがゴール?M&Aがゴール?

ここでポイントになるのがビジネス目標です。ビジネスの目標、つまりどこを事業のゴールにするか?でマーケティング戦略の考え方が少し変わります。主にスタートアップ・ベンチャー企業の場合はIPOかM&Aがゴールになるかと思います。上場が一旦のゴールだったり、大企業に事業を売却するのがゴールだったりすると思います。もちろん、上場であれば更にビジネスは続きますから、一旦のゴールということになります。

IPOがゴールの場合は広報も念頭に置かなければなりません。上場するということは多くの株主が複数になり、多くのステークホルダーを抱えることになります。注目度も上がりますし、企業の規模はもちろんのこと一定の社会性・信頼性がなければ上場することすらできません。IPOをする際には外部からの印象や社会的な役割を果たすことも重要になるのです。

逆にM&Aの場合はIPOをゴールとするときよりは広報について考える必要がありません。社会性や公益性よりも、重要なのは数字になります。将来的な成長性や現在の顧客がどのくらいなのか、利益がどれくらいなのかというビジネス的な数字が重要になります。もちろん、有名になることで買収額の上乗せになる可能性はありますが、あくまで上場と違い売上や利益などのほうが重要です。

つまり、スタートアップ・ベンチャー企業として広告宣伝を考える上で、ゴールによって広報に力を入れるかどうかを決める必要があります。広報はゴールと戦略によって有効性が変わるという点を前提にしておきましょう。

マーケティング目標は売上?利益率?シェア

Webマーケティング戦略を考えます。このスライドではWebマーケティング戦略になっていますが、リアルでの施策も含めて考えましょう。

そしてマーケティング戦略を考える上で重要なのはその戦略を通して成し遂げる目標についてです。主には3つあります。

  • 売上高を上げること
  • コストカットして利益を増やすこと
  • シェアを拡大すること

売上高を増やすのはわかりやすいですね、何億円の売上を目指すのかを決めます。主に広告宣伝を考える場合、おそらくこれが一番の目標かと思います。

コストカットもマーケティング戦略の一部にすることが可能です。利益を増やすために新たなツールを利用したり、IT化・DX化をすすめることで人件費を押さえられたりします。

シェア拡大は売上高を伸ばす目標とよく似ています。ただ、シェアを取るのであればコストが上がり利益率が下がってもよいと考えるかどうかの違いがあります。いわゆるコストリーダーシップ戦略の一部と言えるかと思います。

参考:コストリーダーシップ戦略(外部サイト)

覚えておきたい「認知・比較検討・購入」

ビジネス目標を定めて、マーケティング戦略を考えるのですが、どのように考えればよいのでしょうか。Webもリアルも含めてマーケティング戦略を考える上で、スタートアップの企業であっても、必要な基礎知識を身に着けておきましょう。

認知・比較検討・購入というユーザーの行動パターン

そもそもユーザーはどのように購入まで動くのでしょうか?基本的な行動パターンとして知っておきたいのが「認知・比較検討・購入」のパターンです。これはGoogleが提唱している考え方で、いわゆるAIDMAやAISASを簡単にしたものです。

参考:AIDMAとAISASの違いとは?マーケティングに必要な購買行動モデルをわかりやすく解説

認知は「知ってもらう」ことで知らない商品やサービスは買うことができません。LPで初めて見たサプリメントでも、その内容を知ることで購入に繋がります。知ることは購入の第一歩になります。

比較検討は他社との比較を行う段階です。今やどのような商品やサービスでも競合するものがあります。その競合する企業の商品やサービスについて、価格や機能、ベネフィットまで比較をするのです。競合他社だけでなく、代替品との比較検討もあります。

購入はそのままで購入・契約の段階です。

「認知・比較検討・購入」という基本のユーザー行動を前提として、スタートアップ向けの広告宣伝を考えます。

バタフライサーキットを理解する

もう一つ、知っておきたいのが「パルス消費」「バタフライサーキット」についてです。一般的に認知してもらい、比較検討した後に購入するというユーザーの行動パターンがありますが、昨今はこのパターンに当てはまらないユーザーも増えています。それが「パルス消費」です

パルス消費は商品を急に購入する消費行動です。例えばライブコマースを見て購入する、インフルエンサーが紹介していたから購入したというような消費行動です。知らなかった商品を比較検討もせずに購入するというパルス消費ですが、このときのユーザー行動の仮説がバタフライサーキットです。バタフライサーキットは商品の認知や比較検討(=さぐる)を常に行い、何らかの購入タイミングで突然購入する(=かためる)という考え方です。

現在のユーザーは常に何らかの情報に触れています。テレビやスマートフォン、デジタルサイネージなど、様々な場所で情報を取得しています。そしてスマートフォンを使えばわからないことを調べられるし、比較検討も簡単にできます。このようにずっとニーズ・ウォンツが溢れている状態で、何らかのきっかけで急に購入したように見えるわけです。それはセールやキャンペーンのようなオファーかもしれませんし、ネットやテレビで紹介されたことがきっかけかもしれません。

バタフライサーキットで知っておくべきことは「現代人は情報にずっと触れている」ということです。競合他社の情報にも触れているユーザーを、自社の商品に振り向かせるためにどうするか?これがポイントになります。

必ず購入に近いユーザーから狙おう

認知・比較検討・購入のユーザー行動では、認知が増えれば比較検討の絶対数も増え、購入する数も増えるという傾向があります。サッカー人口を増やすことで、よりプロを増やし、天才的プレーヤーを生み出すという考え方と似ています。マーケティング的にはこのような三角形を逆にした、すり鉢状の「マーケティングファネル」という考え方です。

参考:マーケティングファネルとは?テンプレート3種類や活用方法を紹介

大事なことは認知・比較検討のユーザーを増えれば購入するユーザーが増えるのですが、この認知から購入までの期間というのは金額が高いものほど遅くなります。例えば一戸建てを買う場合、自動車を買う場合、大きな家電を買う場合などは時間をかけて検討するかと思います。逆に100円程度のものは認知してすぐ購入してもらえるでしょう。

値段によって認知してから購入してもらうまでの期間は違いますが、原則として購入に近いユーザーから広告宣伝では狙います。なぜならすでに商品や会社を知っており、かつニーズが有るユーザーは、購入確率が高いためです。購入率が高ければ、広告費も安く抑えることができるため、まずは購入に近いユーザーからアプローチしていきます。

購入に近いユーザーが少なくなったら、比較検討の段階にいるユーザーにアプローチし、その後に認知の段階にいるユーザーにアプローチします。広告宣伝の費用対効果を高めるために、顕在客から狙っていくという原則を覚えておきましょう。

試すにしても根拠が必要

広告宣伝、特にWEB系の場合はとりあえずやってみることも多いかもしれません。しかし、実際にとりあえずやってみて成功したケースというのは多くないと思います。広告宣伝・マーケティングの世界では「この施策はこういう層に効果的」というのが決まっています。例えばリスティング広告はコンバージョンさせるのに効果的ですが、You Tube広告は認知促進に向いています。施策ごとに向いているものが決まっているのです。

だから「とりあえずやってみる」と、狙いと施策があべこべになってしまうことがあります。もちろんコンバージョンを促進することが得意な広告宣伝施策を使っても、うまく行かないこともあります。とは言え、最低限狙いと施策は合わせて置かなければなりません。無駄な広告宣伝費用を使うのは事業にブレーキを掛けますし、VCなどの投資家から苦言を呈される可能性もあるでしょうからね。

BtoBの具体的な広告宣伝プロモーション

では、具体的なプロモーション施策をご紹介していきます。まずはBtoBの施策です。

コストをかけず対面営業を重視せよ

原則として、最初から大きな費用をかけるのはご法度です。もし何十億・何百億円も調達しているのなら別ですが、そうでないならコストを掛けない営業活動のほうがおすすめです。昔ながらの対面営業を一番最初に行います。スタートアップの場合、支援がたくさんあります。自治体や銀行、任意団体などにアプローチし、マッチングしてもらうことも可能です。例えばみずほ銀行であれば「M'sサロン」と呼ばれる、スタートアップを支援する仕組みがあります。

イノベーション企業支援『M's Salon』 | みずほ銀行

その他にも様々な団体がセミナーやピッチイベントなども行っています。「東京 スタートアップ支援」や「大阪 ベンチャー支援」などで調べてもらえれば、自治体やその他団体がたくさん出てきます。これらの支援を使って営業活動を進めていきましょう。また販路開拓と資金調達は同時に行えるのも、支援施策を使うメリットです。

BtoBの場合は広告宣伝は後回しにします。なぜなら広告宣伝で知った商品やサービスをすぐに導入できないからです。企業は根回しや稟議など、実際に商品を購入したりサービスを導入するまでに時間がかかります。広告でいくらお金をかけても、稟議の時間を短くすることは出来ません。だからある程度時間をかけて開拓する必要があるため、広告宣伝は後回しにしましょう。

展示会とリードナーチャリングが基本

ウェットな営業を行うだけでなく、有料施策の場合もできるだけ直接企業とコンタクトを取れる施策を選びましょう。ここでも重要なことは「顕在客から狙う」です。認知を獲得したりするより、すでに自社の商品・サービスにニーズを持っている企業にアプローチします。

一番可能性が高いのが展示会への出展でしょう。効果が落ちてきているとは言え、まだまだBtoB営業では必要な施策です。オンラインで言えばフォームDM・メールDMで直接企業に連絡します。ホワイトペーパーと呼ばれる役立つ資料のダウンロード、無料セミナーへの誘導などを行い、電話や対面で顧客と話ができる状況を作りましょう。

またBtoBの場合はリード獲得・リード育成が重要です。見込み顧客の獲得と見込み顧客から顧客への育成をリードナーチャリングと言います。たくさんの見込み顧客を獲得し、見込み顧客に電話営業等を行う、セミナーなどでリアルに課題をヒアリングするなどし、顧客に変えていきます。長い目で見るならメルマガを送り続けるのも一つの方法です。

IPOを目指すのであれば、広報も重要です。PR会社にお願いしてもいいと思います。広報は認知促進に繋がりますから、認知を増やしたい場合にはM&A狙いでも活用しましょう。

BtoCの具体的な広告宣伝プロモーション

次にBtoCの広告宣伝です。BtoCのほうがイメージしやすいかと思います。

クラウドファンディングとSNSでニーズも調査できる

BtoCの場合もコストをなるべく掛けない事が重要です。一番オススメの手法はクラウドファンディングです。クラウドファンディングとSNSを活用することで、ニーズ調査も行う事が可能です。多くの人が寄付購入をしてくれたり、SNSで拡散してくれているなら、その商品・サービスは売れる可能性が高いと言えます。

商品を販売する場合はGoogleショッピングやInstagramショップなどが使えます。これらは無料で利用することが可能なので、EC系の場合は登録しておいたほうが良いでしょう。

BtoCでもBtoBと同じく、認知獲得と資金調達を同時に行いつつ、セミナーやピッチイベントなども活用していきましょう。

BtoCの場合、広告宣伝が非常に効果的です。パルス消費の話題を取り上げたかと思いますが、広告などで知った商品をすぐに購入するユーザーも少なくありません。BtoBと違って自分がほしいと思えばすぐに購入できるのもBtoCの特徴です(自動車や家などの高額なものは除く)。ですので、デジタル広告を活用していくことが、BtoCの広告宣伝では重要です。

広告・プロモーションでエンドユーザーに接触を

有料施策ではおすすめはインフルエンサーマーケティングです。特にマイクロインフルエンサーがおすすめです。一時期、マイクロインフルエンサーを使ったプロモーションをシャワーヘッドで行う企業が多くいましたが、商品を無償提供して宣伝してもらう「ギフティング」が使えます。広告費を使わずに販売促進として商品を無償提供する、というのはリスクを低く行う事ができる施策です。

また、リスティング広告やGoogleショッピング広告、SNS広告などもおすすめです。BtoCも顕在客からターゲットにしていく必要がありますが、リスティング広告なら商品名や会社名、商品カテゴリ等を検索したユーザーに広告を届けることができます。顕在客を狙いやすいのが特徴的です。Googleの場合は有料のショッピング広告も効果的です。SNS広告もInstagramショップなどを活用すると効果的です。

認知を獲得するのであればYou Tube広告がおすすめです。You Tube広告は購入に繋がることは少ないですが、商品やサービス・企業を知ってもらうのにおすすめです。動画は短い時間にたくさんの情報を伝えることができるため、認知して記憶に残りやすいと言えます。

広報もまたBtoBと同じくIPOを狙うならおすすめです。