シールブームはなぜ急に終わったのか?タピオカ・マリトッツォ・たまごっちに共通する「ブーム終了のサイン」

シールを集めてシール帳に貼り、友達と交換する。子どもや若い世代を中心に、そんなシールブームが大きな話題になりました。ところが最近は、この話をほとんど聞かなくなっていませんか?

ブームが去ること自体は珍しい話ではありません。ただ今回は、その流れがなかなか興味深いものでした。わずか3か月前、シールメーカーの社長は「ブームはまだまだ終わりませんよ」と話していたからです。

2026年6月「まだまだ終わりませんよ」

2026年6月、人気の「ボンボンドロップシール」を開発・販売する会社の社長は、メディアで「(ブームは)まだまだ終わりませんよ!」と語っていました。

  • 生産体制は、以前の3〜4倍に
  • 6月の出荷は約400万個、7月は約500万個の予定
  • 年内に約3,000万個の受注を抱えている

つまり「需要が多すぎて追いつかない」という状況でした。6月の記事でこの状態ですから、5月後半から6月にかけては、シールはまだまだ伸びると見られていたわけです。

(参考:AdverTimes 2026年6月18日/ORICON NEWS)

3か月後の9月、状況は一変した

それから3か月後の9月。ボンボンドロップシールは普通に店頭に並ぶようになり、手に入らないということはなくなりました。

一方で、「これは儲かる」と後から参入した他のシールは、80%オフで投げ売りされていたと報道されています。500円の商品が100円という、かなり厳しい価格です。毎日のように来ていた在庫の問い合わせ電話もなくなり、「儲かったのは転売屋だけ」という声まで出ています。

3か月前には「まだまだ終わらない」と言われていたのに、なぜここまで急に潮目が変わったのでしょうか。

(参考:デイリー新潮 2026年9月5日(Yahoo!ニュース))

ブームには、必ず終わりがある

まず前提として、ブームには必ず終わりがあります。ずっと続くということはありません。

もちろん、ティラミスのように定番として残るものもあります。しかし「ブーム」と呼ばれるほどの大きな需要は、いずれ必ずなくなります。

そして、ブームの終わりが近づくと、いくつかのサインが出ると昔から言われてきました。

昔から言われている「終わりのサイン」

  • 株式相場…靴磨きの少年が株の話をしたら値段は天井
    • 1929年、ある投資家が靴磨きの少年から株を勧められ、「こんな少年まで株の話をしているなら、もう天井だ」と判断して株を売り、その後の大暴落を避けた、という話です。有名な逸話として語られている話ですが、今でもよく引き合いに出されます。
  • ネットの話題…テレビで紹介されたネットスラングは廃れる
    • テレビがネットスラングを取り上げるころには、ネット上ではもう使われなくなっている、ということがよくあります。
  • 全体的な流行…流行語大賞に選ばれたら終わり
    • 流行語大賞に選ばれた時点で、すでに誰も使っていない、ということも珍しくありません。

この3つに共通しているのは、「一番遠い人にまで届いた」というサインだという点です。

一番遠い人とは、もともとその話題に興味がなかった人のことです。インターネットもテレビもない時代に、毎日靴を磨いてお金を稼いでいた少年にまで「株を買えば儲かる」という話が届くのはかなり時間がかかります。情報がそこまで行き渡ったのなら、もう新しく買う人は残っていない。だから天井だと判断したわけです。

流行の実例1「タピオカ」

タピオカは、2019年に「タピる」が新語・流行語大賞のトップテンに入りました。コンビニでもタピオカドリンクが並ぶようになった年です。ところが翌2020年には、タピオカ店の大量閉店が起きています。流行語大賞は年末の発表ですから、選ばれた翌年にはもう閉店が相次いでいたことになります。

お店が乱立し、コンビニでも買えるようになったことで、希少性がなくなりました。そこにコロナ禍が重なり、店舗はどんどん減っていきました。

それでも、ゴンチャのように今も残っている有名店はあります。タピオカを長くやろうとしていたところは残り、儲かりそうなところに行って一気に稼ごうとしていた人たちは、儲からなくなると離れていきました。山師のような人たちが寄ってこなくなったとき、ブームは終わるのでしょう。

(参考:モデルプレス「タピる」2019年新語・流行語大賞トップテン入り)

流行の実例2「マリトッツォ」

マリトッツォも同じです。2021年には大手コンビニ各社が相次いで商品化し、同年11月には新語・流行語大賞にノミネートされ、日経トレンディのヒット商品ランキングでも6位に入りました。

ところが、2021年の下期にはすでにブームは退潮していたと言われています。そして2023年ごろには「売っていない」という声が上がるほど、店頭から姿を消していきました。

タピオカは今でも専門店で買えますが、マリトッツォは手に入りにくいほどなくなりました。一時的なブームだったということです。ランキングに選ばれたころには、もう下り坂だったのではないでしょうか。

(参考:日経クロストレンド/グルメ Watch(2021年新語・流行語大賞ノミネート))

流行の実例3「たまごっちは、シールとよく似ていた」

もう少し前の例では、たまごっちがあります。

たまごっちボンボンドロップシール
品薄1996〜97年2025〜26年
増産月産300万個体制に(1997年7月)月400〜500万個を出荷(2026年6〜7月)
その後1998年にブーム沈静化。在庫250万個を処分し、60億円の特別損失?

たまごっちは品薄を解消しようと大増産しましたが、生産が追いついたころにはブームが冷めていました。

当時は、たまごっちに似た類似品や海賊版も数多く出回っていました。今ほど規制が厳しくなかったこともあり、いろいろな「たまごっちのようなもの」が売られていました。これもブームの沈静化に一役買ったのではないでしょうか。後から参入したシールが投げ売りされている今の状況と、よく似ています。

シールブームが同じ道をたどるかどうかは分かりません。当時とは状況も違います。ただ、増産した直後にブームが沈静化してきている、という構図はよく似ています。

(参考:ORICON NEWS「ブーム終焉から復活を遂げた『たまごっち』の25年」)

もうひとつのサイン:売り手の熱が、買い手の熱を追い越したとき

ブームの終わりのサインは、ひとつではありません。

  1. 一番遠い人にまで届いた(靴磨きの少年、テレビで紹介される、流行語大賞に選ばれる)
  2. 売り手の熱が、買い手の熱を追い越した

2つ目は、売ろうとしている側の熱が、買おうとしている消費者の熱より強くなってしまった状態です。今回で言えば、「まだまだ売れますよ」「まだまだブームは終わりませんよ」と売り手側が語り始めた状況がそれにあたります。こうなったら、ブームはもう終わりに近いと考えたほうが良いかも知れません。

ブームを作るのは、売り手ではなく消費者

売り手がどれだけ売ろうとしても、消費者が欲しくなければ買いません。逆に本当に欲しいものであれば、売り込まなくても勝手に買っていきます。ブームは売り手が作るものではなく、消費者が作るものです。これが大前提です。

ですから、メーカーや企業がどれだけ「ブームが続いてほしい」と願っても、それはどうしようもありません。市場の見えざる手に任せるしかない、と考えた方がよいと思います。

売り手の「終わらない」に消費者が冷めてしまう理由は、下記のようなものでしょう。

  • 希少性が消える
    • 量が増えていつでも買えるようになると、ブームが去っていく典型的なパターンに入ります
  • 「自分たちで見つけた」楽しさがなくなる
    • 自分たちで見つけて楽しんでいたものが、みんなのものになってしまう
  • 「売りたいだけ」に見えてしまう
    • 売ろう売ろうとするメーカーがたくさんいると、売りつけられているように感じて、買いたくなくなる

まとめ

  • 6月には続いていたシールブームが9月にはかなり失速している
  • ブームが終わるのは「遠い人まで届いた」時
  • ブームを作るのは消費者で生産者側ではない

これからも、いろいろなブームが生まれると思います。そのときに安易に乗ってしまうと、本当に失敗してしまいます。今そのブームがどの段階にあるのかを見極めることは、ビジネスをするうえで大事なことです。

もちろん、ブームに乗って稼ぎ、ブームが去ったらそこから離れる、というやり方もひとつの方法です。ビジネスは自由ですから、それを否定するつもりはありません。ただ、ひとつの事業の本質を突き詰めて長く続けていこうとするのであれば、あまりいろいろなものに手を出さない方がよいのではないか。私はそう考えています。

投稿者プロフィール

松本 孝行
松本 孝行代表取締役
兵庫県伊丹市出身

2006年、立命館大学経営学部卒業後、パソコンソフトの卸売会社、総合商社子会社に就職し、2008年に独立。

2011年頃からSEO対策・アフィリエイト用の文章制作から、独学でリスティング広告やアクセス解析、SNS広告などを学び、サービスを展開。

短期大学の情報処理講師や職業訓練校のWebサイト制作クラス・ECマーケティングクラスなどで講師を担当。

現在は株式会社キヨスル代表取締役として、Webマーケティングをデザインすることでクライアントのビジネスに貢献する。