AIは燃費の悪いレトロ車。人間が勝てる部分とは?
chatGPTを始めとしたAIの進歩により、ウェブマーケティング業界には大きな変化が訪れています。そして今後、人の行動も変わっていく事を考えると、我々はある程度AIについてのトレンドを追う必要があります。
AIサービスは大量のデータが必要
ChatGPTは有名になりましたが、実際にそれを利用している人はどのくらいいるのでしょうか?
野村総研さんが出されたレポートによると、2023年4月時点で利用していると答えた人はたったの12%でした(参考:日本のChatGPT利用動向(2023年4月時点))。ChatGPTを認知している人は半数以上にも上りますが、利用している人となるとその数は途端に下がります。8人に1人程度しか利用していないのです。
ChatGPTほど有名なAIツールでも、知っているけれどもあまり利用されていないのです。ChatGPTを始めとして、AIツールが利用されていない理由として考えられるのは2つです。
1つは使いどころが難しい点です。「質問したら答えてくれる。では何を聞けば良いのかわからない」という人は多いでしょう。現在chatGPTは芸能人の話など、ゴシップのような面には非常に弱く、遊びではなかなか使いにくい状況です。現在、利用者は主に一部のビジネスでの利用に限られてしまっています。単純なチャット機能ですら、AIをどのように活用すればよいのか分かりづらいのが現状です。
更にもう1つは「大量の学習データを必要とする事」です。実は弊社でもAIをサービスに利用できないかと考えた事があり、10件ほどお話を伺った事があります。その際、すべてに共通していたのが大量の学習データが必要である、ということでした。教師データと呼ばれる学習データを取り込む事で「○○の傾向の人にはこの広告を出しましょう」という提案をAIツールができるようになります。しかしなぜ、そこまで多くのデータが必要なのでしょうか。
多くのデータが必要な理由の1つがcookie規制です。ファーストパーティーと呼ばれている、自社内サービスでのデータ獲得は認められています。ただ、欧州を中心としたGDPR等によるcookie規制でサードパーティーデータは使いづらくなっています。ほとんどのAIサービスが自社でタグを設定し、情報を取得する形になっています。AIの利用にオープンなデータが使えないため、大量のデータを自社で集めなければならないのです。
では大量のデータとは具体的にどのくらいのものなのでしょうか?例えばECサイトであればトランザクションやコンバージョン率のデータが月に何百件と必要になります。弊社のお客様でも100~200件ほどなら可能ですが、1,000件の注文が必要となると不可能に近いです。更にアクセス数が100,000件必要であったり、新規ユーザー数が10,000人必要となると中小企業、更には大企業の子会社にもかなり厳しいものになります。
教師データが多く必要という点は、現在のAIサービスの大きな弱点です。
仮説・検証を繰り返すことができる人間の力はまだまだ必要
大量のデータが必要なAIは例えるならば、燃費の悪いレトロ車のようなものです。好きな人は好きですが、みんながみんな持てるものではありません。AIは大量のデータから人間にはできない分析をし、売上を上げる事ができるかもしれません。しかしそれは、大量のデータがある事が前提です。
しかし日本では企業のほとんどが中小企業であり、自力で大量のデータを集める力はありません。となるとAIは役に立たない訳ですが、そこで人間の強みを活かす事ができます。AIは分析に大量のデータが必要ですが、人間は少ないデータから分析が可能です。
例えばある企業でターゲット・ペルソナを作る際、AIは300件のコンバージョンが必要かもしれませんが、人間であれば300件も必要ありません。20~30件ほどあればターゲティングの仮説を作る事ができます。AIは大量のデータから結論を出しますが、人間は結論の前に「こういう属性の人が買ってくれているんじゃないか?」という仮説を立てる事ができます。更にその少ないデータから立てた仮説を検証する事もできます。もちろん必ず上手くいく訳ではありませんが、当たれば集中投下、外れれば更に仮説・検証と進める事ができるのは人間の強みです。
もし今後、他社のデータも自由に扱えるような法律ができればこの話は前提から崩れてしまいますが、より厳しい規制がされる事はあっても緩くなる方向への法律制定はまずないでしょう。ですので、まだまだAIよりも人間の方が勝っている部分は多くあります。AIに人間は負けてないですよ。
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