ジャングリア173億円の赤字。でも沖縄観光は過去最高だった
ジャングリア沖縄の親会社が173億円の赤字を計上したことが、ネット上で話題になっています。今回はこのニュースをきっかけに、マーケティングの視点で考えてみます。
なお、国の資金の流れなどをめぐっては、さまざまな意見が出ています。ただ、それは別の議論だと考えていますので、ここでは触れません。あくまでマーケティングの話として読んでいただければと思います。
9月25日の株主総会で明らかになったこと
2026年9月25日に開かれた株主総会で、開業後はじめての決算が示されました。
- 2026年6月までの1年間で、173億円の最終赤字
- 初年度の来場者は約100万人。想定は150万人だった
- 1日あたり約2,700人。1,000人に満たない日もあった
想定の3分の2ほどしか集まらなかったことになります。
これを受けて、株式会社刀の森岡毅氏は「申し訳ありませんでした」と謝罪し、再建計画を示しました。来場者数の目標値を引き下げ、損益分岐点も引き下げるという発表を行いました。つまり固定費を落として、低い売上でも黒字になる形に作り直すという内容です。
なぜ選ばれていないのか
首都圏で行われた調査ではジャングリアを知っている人のうち、
- 「行きたい」…26.5%(4人に1人ほど)
- 「行きたくない」…46.7%(約半数)
となっていました。そして「行きたくない」理由の内訳が、こうなっています。
| 理由 | 割合 |
|---|---|
| 沖縄まで行きにくい | 44.7% |
| 価格が高い | 29.2% |
| 他の観光を優先したい | 23.6% |
| 内容に魅力を感じない | 23.1% |
(リサート社調査・2026年7月・首都圏800人/J-CASTニュース)
いちばん多い理由は「沖縄まで行きにくい」でした。
「沖縄まで行きにくい」は、本当か
アンケートで「沖縄まで行きにくい」という内容を簡単に信じて良いのでしょうか?
「沖縄まで行きにくい」と答えた人が多かったのは事実でしょう。しかし問題は、その人たちは本当にそれが理由でジャングリアに行かないのかということです。言い換えると、もし沖縄が東京ディズニーランドのように近くにあったら、その人たちはジャングリアに行くのでしょうか。
つまり、立地が悪いから赤字になっているのでしょうか。
こういう場合、別のアンケートや別の統計を見ることをおすすめします。ひとつの統計、ひとつのアンケートだけで結論を出すと、たいてい間違えます。
沖縄観光は、過去最高を更新している
沖縄の観光統計を見ると、まったく違う景色が見えてきます。
- 2026年度の観光客数は1,133万人の見通し(初めて1,100万人超え)
- うち国内客は809万人で、こちらも過去最多
- 観光収入も1兆1,048億円と、過去最高を目指す水準
インバウンドが多いから増えているのかと思いきや、国内客が7割以上を占めていて、しかも過去最多です。
観光収入が過去最高というのも、ひとつのポイントです。物価が上がっている影響もあるので単純には言えませんが、1人あたりが使うお金が増えている、つまり財布のひもが緩みやすい状態だとも読めます。
「沖縄は遠い」とアンケートでは多く答えていたのに、実際には、過去最多の人が来て、過去最高のお金を落としているのです。
遠くても、人は来ている
同じ沖縄北部にある沖縄美ら海水族館は、年間300万人を超える入館者を集めています。入館料は大人2,180円です。
長崎のハウステンボスも、年間約250万人が訪れると言われます。
| 来場者 | 料金(大人) | |
|---|---|---|
| 沖縄美ら海水族館 | 年間300万人超 | 2,180円 |
| ジャングリア沖縄 | 初年度 約100万人 | 1日券 6,930円 |
料金は約3倍で、来場者は約3分の1。遠かろうが何だろうが、来る人は来ているのです。
「遠い」と答えた人は、そもそも旅行をしない層かもしれない
「沖縄まで行きにくい」と答えた人の多くは、そもそも旅行に行かない層である可能性が高いと考えています。経済的な事情かもしれませんし、旅行そのものに関心がないのかもしれません。そういう人たちに聞いたところで、売上にはつながりません。
そして、ここを読み違えると施策も外してしまいます。「沖縄への航路を増やせばいいのでは」「ジャングリアのツアーを組んで距離を感じにくくすればいいのでは」という施策を考えても、その人たちはもともと来ないのですから、効果は出ないでしょう。
市場はあるが選ばれていない
結論として、こういうことになります。
- 沖縄観光は過去最多の人が来ている(市場は伸びている)
- その中で、美ら海水族館や他の観光が選ばれている
- つまり「沖縄に行きにくい」のではなく、「ジャングリアが選ばれていない」
ですから、やるべきことは距離の解消ではなく、選ばれるようにすることです。ここがいちばん難しい部分ではありますが、刀にはUSJでハリー・ポッターを当てた実績があります。コンテンツの力はあるはずなので、それをどう知ってもらい、どう届けるかということになるでしょう。
中小企業が学べること
ここからは一般論ですが、市場が伸びているかどうかは中小企業ほど見たほうが良いと考えています。自社の数字が悪いとき、まず切り分けるべきことが下記の通りです。
市場そのものが縮んでいるのか。それとも、市場はあるのに自社が選ばれていないだけなのか。
今回の沖縄のように、市場が過去最多になっているのに自社がうまくいっていないのであれば、自社のあり方を変えるしかありません。逆に言えば、努力のしがいがあるということでもあります。他社が優れている部分があるなら、そこを埋めればよいのですから。
一方で、調べてみたら市場全体が縮んでいた、というケースもあります。たとえばタピオカを例に取ると、タピオカ店を出したもののうまくいかなかったとします。市場を調べてみるとブームが過ぎていて、市場そのものが小さくなっていました。この場合、どれだけ努力しても、どれだけ投資してもうまくいきません。縮んでいく市場の中でシェアを増やすのは、かなり厳しい戦いです。
そうであれば、撤退するという判断も考えなければいけません。
まとめ
- ジャングリアの親会社は173億円の最終赤字。来場者は想定150万人に対して約100万人
- 沖縄観光は過去最高に、市場自体は伸びている
- 市場が伸びているのかどうかを見て自社の施策を考える
アンケートも統計もひとつだけで判断するのは問題です。多面的に見る事が重要です。ここを押さえておくと、マーケティングの判断はずいぶん変わってくると思います。
投稿者プロフィール

- 代表取締役
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兵庫県伊丹市出身
2006年、立命館大学経営学部卒業後、パソコンソフトの卸売会社、総合商社子会社に就職し、2008年に独立。
2011年頃からSEO対策・アフィリエイト用の文章制作から、独学でリスティング広告やアクセス解析、SNS広告などを学び、サービスを展開。
短期大学の情報処理講師や職業訓練校のWebサイト制作クラス・ECマーケティングクラスなどで講師を担当。
現在は株式会社キヨスル代表取締役として、Webマーケティングをデザインすることでクライアントのビジネスに貢献する。





