リーチしきった広告にお金をかけ続けるのは意味がない
デジタル広告の言葉は横文字が多く、分かりにくい事も多々ありますが今回お話する「リーチ」もそのひとつです。リーチとはその広告・情報が、どこのユーザー、どんな層まで届いているかを表します。
リーチは必ず鈍化する
デジタル広告の約半分で使用されている検索連動型広告で、このリーチをKPIにすることがあります。リーチを伸ばすことにお金をつぎ込み、色んな層にリーチさせていく訳ですが、頭打ちになる事がよくあります。1〜2年でピークを迎えて、「この辺りが頭打ちか」と思えるようになります。特にベンチャー企業やスタートアップ系の企業はリーチが頭打ちすることが多くみられます。
最初に費用をかけて広告を出し、順調に進んでいってもどこかで必ず鈍化していきます。これが「リーチが及ぶ範囲内に広告が広まったとき」、つまり「リーチしきった状態」になります。ただ、これはどうしても起こる事なので仕方がない事です。海に直径100mの囲いを作り、その中にいる魚のほぼすべてに餌が行き渡り、新しい餌を投げても食い付かれない状態をイメージしてもらうと分かりやすいかと思います。
これは「この広告媒体で情報を届けられるユーザーはもうすべて届け終えました」という状態です。そしてこの状態でいくらお金をかけても、鈍化した状態からは抜け出せません。
例えば、5000万人に広告を見てもらいそのうちの何%かに商品を購入してもらったとしましょう。そしてさらに、その5000万人に広告を出しても、すでに購入している人は情報を持っているので広告を必要としていません。逆に購入しない人はどんなに広告を出しても購入しないので、意味がないのが分かるかと思います。
今までとは違う層へリーチをかける
ではリーチしきった状態になった時、どうすればいいのでしょうか?
この場合は「他のプロモーション広告に切り替える」という方法をよく取ります。例えば検索連動型広告をしている場合はSNS広告に切り替える、などです。
そして先ほど言った、ベンチャー企業やスタートアップ系の企業はリスティング広告やSNS広告などが終わると、アナログ広告に移行する事が多くあります。新聞・雑誌・テレビ・ラジオでのプロモーションに移行することで、デジタル広告の層とは違う層にリーチをする事ができるのです。
例えば、若者にリーチさせたい時はTikTokやTwitterを利用しますが、新聞は利用しません。若者が新聞を読む可能性は低いので意味がありません。ですが高齢者にリーチさせたい時はTikTokやTwitterよりも、新聞の方がリーチします。日経新聞ならビジネス系、朝日新聞なら教育系、読売新聞なら巨人ファンなど、届けたい方向性も絞りやすいでしょう。
テレビ・雑誌・ラジオも同じです。最近だとテレビCMでよくGoogleを見かけます。あれもきちんと意味がある広告です。テレビ離れと言われていますが、テレビCMしか見ないという人も一定数いるので、GoogleやAppleといった大企業でも、テレビCMを使わないと情報が届けられない層が一定数存在しているという事です。つまり、デジタルとはまったく違う層に情報を届ける事ができるのです。
リーチしきった状態ではいくら広告にお金をかけようとも、効果が出なくなります。これは前回にお話した、刈り取り型の施策は必ず低減してしまうという現象によく似ています(参考:顧客を刈り取って終わりではなくリードナーチャリングで次を育てる)。刈り取り終えたら顧客がいなくなるので、SNSなど別の形を取ります。リードナーチャリングで顧客を育てるというお話でしたが、リーチしきった場合は、リーチしきった顧客にも情報を配信を続け、購入につなげるというのも大事です。
つまり一番大事な事は、同じ事を続けているだけではだめだという事です。右肩上がりに続けていくには、必ず他の事もしていかないといけません。一時期はSEO対策だけやっていればいいという時代がありましたが、今はSEO対策だけ、検索連動型広告だけでは意味がありません。動画や画像など、他の広告媒体も合わせてやる事で、リードナーチャリングにもなり、リーチを広げる事もできるのです。