二重価格問題から考える適切な価格設定とは
最近「二重価格」がニュースでも取り上げられ、話題になっています。コロナ渦も終わり、外国人観光客が増えることで提唱されるようになったようです。マーケティング的にもヒントになりますのでしっかりチェックしておきましょう。
二重価格は差別なのか?
姫路城では外国人観光客に向けて、二重価格を導入するかが検討されています。価格は約30ドルで、現在のレートで換算すると約4,200~4,300円ほどです。市民が700円に対し、観光客は約4,200円で6倍程度の価格になる事へ、「差別ではないのか」との声が上がっています。差別かどうかは判断が難しいところですが、世界的に見て観光地での二重価格は珍しい事ではありません。マチュピチュなど、様々な観光地では現地住民と観光客で価格が違う場所が存在します。
参考:姫路城が検討する外国人への「二重価格」 民間にも導入の動き:朝日新聞デジタル
また、最近の二重価格問題と言えば、牛角の女性半額キャンペーンがありました。焼肉チェーンの牛角が、食べ放題の半額キャンペーンを女性限定で行ったキャンペーンなのですが、Xでは「男性差別だ」と炎上しました。昨今のXは男女差別への関心がかなり高く、牛角側に差別の意図がなくても、性別で価格が異なる事は差別だと認識されてしまいました。
参考:牛角の「女性半額キャンペーン」が“男性差別”と物議…担当者は「性差別を意図しておこなったものではない」(女性自身) - Yahoo!ニュース
そもそもですが、二重価格は差別なのでしょうか?差別か差別ではないかと言えば、差別に当たるのではないかと思います。問題はそれが「許容できる差別かどうか」です。例えば敬老パスや子どもの医療費補助なども、二重価格です。世界的な観光地でも二重価格は存在することからも、二重価格は許容できる差別と言えるのではないかと思います。
しかし先述の通り厳密に差別かどうかの判断は倫理的な問題なので、非常に難しい問題です。ただ、「なぜ二重価格を導入するのか」の根本的な理由を知る事で、マーケティングに役立てる事ができます。
二重価格=より多く売り上げたい
姫路城の事例では円安の影響もあり、たくさんお金を落としてくれる可能性の高い外国人観光客から、売上を考えたいという考えです。海外旅行に行けるような外国人観光客はお金に余裕があるので、日本人よりお金を使ってくれる可能性が高いと考えられます。だから二重価格が検討されているわけです。
牛角も実は同じような理由で、女性を半額にすることで、女性客をやカップル、家族連れの顧客を増やそうとキャンペーンを打ち出しました。平均的には男性よりも女性の方が食べる量が少ないので、男性は半額にできなくても女性は半額にしても利益が出るという考えでしょう。
そしてこの両者に共通しているのが、「売上・利益を多くしたい」という事です。企業である牛角や、城の保全などに費用がかかる姫路城が、より多くの客に来てもらいたい・より多くの利益を得たいと思うのは自然なことです。だから利益・売上を上げるための施策として二重価格を考えるのも当然と言えるでしょう。
稲盛和夫さんの「値決めは経営」が重要
しかし、まずは立ち止まって考える必要もあります。二重価格が最も良い方法なのでしょうか?
ここで重要になるのが、稲盛和夫さんの「値決めは経営」という言葉です。値決めは「売れる量と利幅の積が極大値になる点をピンポイントで求める」とともに、「お客様と企業の両者がハッピーになれる点をピンポイントで求める」とも残しています。企業にとって利益が最大になる事は重要ですが、それがお客様と企業の両者がハッピーになれるものでなければなりません。
参考:値決めは経営である | 思想 | 稲盛和夫について | 稲盛和夫 オフィシャルサイト
この稲盛さんの考え方を下地に、今回姫路城や牛角の二重価格を考えてみましょう。もっと他に企業もお客様もハッピーになる方法はあったのではないでしょうか。例えば男女関係なく30%引きや、市民にクーポンを配るなど、炎上しない・納得してもらえるやり方が他にあったのではないでしょうか。
値決めは経営という言葉の正しさが、この二重価格問題でもよく分かるのではないかと思います。
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