「転売ヤーに売ればいい」は経済学的には正解。でも経営者はなぜ違う判断をするのか 

しまむらとドラゴンクエストのコラボ商品が発売1分で完売し、SNSでは早速、転売の是非が話題になりました。こうした限定商品やコラボ商品が出るたびに、ほぼ必ずと言っていいほど転売問題が持ち上がります。

(参考:しまむらドラクエコラボ、販売開始1分で完売 転売に関する議論が広がる ファンの声も(2026/07/11)|SNSのバズまとめ - Yahoo!リアルタイム検索

転売ヤーに売ればいいという考え方は、経済学的には正恣意とされています。ですが、多くの経営者は転売ヤーに売ることを嫌います。なぜなのでしょうか。

転売自体は、日本でも違法ではない

転売と聞くと反射的に「けしからん」と感じる方も多いと思いますが、日本において転売そのものは違法ではありません。違法とされているのは、チケット不正転売禁止法の対象となるチケット類のみです。フィギュアやカード、日用品などの転売には、それを禁じる個別の法律はなく、原則として合法です。

では、なぜ転売をする人が毎回現れるのでしょうか?

転売をする人が現れるのは、単純に儲かるからです。この「需給の一致」という観点から見ると、転売を許容することは経済学的には正しい判断といえるでしょう。需要と供給が一致する価格まで価格を上げて販売されるなら、市場としてはむしろ効率的だからです。

転売は国によって受け止め方が大きく違う

ただし、この「転売は市場として合理的」という考え方への反応は、国によってまったく異なります。

日本では「本当に欲しい人に商品が届かない」という強い反発が起きがちです。一方、アメリカでは、転売は一般的に禁止されていません。よく知られる例がスーパーボウルのチケットで、1枚あたり50万円を超える値段で転売されることもあると言われています。つまり、転売が当たり前の市場として機能している国もあるのです。

世界的に見て「転売はダメ」という共通認識があるわけではなく、日本の強い反発は、あくまでローカルなルール・文化なのです。

経済学は「その瞬間」、経営は「数十年後」まで見て判断する

以前、人手不足の解決策として経済学者がよく口にする「時給を上げ続ければ人は集まる」という主張と、現場の経営者の判断とのズレを取り上げたことがあります。

経済学に賛成?反対?経営者の考え方との違い

経済学者がいろいろな提言をしているのはSNSやニュース番組などで見るかと思います。経営者としても賛成する部分も多いのですが、簡単にできない部分もあるな、と感じてい…

経済学は基本的に、その瞬間の需要と供給を一致させることを考えます。一方で経営は、その瞬間だけでなく3年後、5年後、時には数十年後まで見て判断します。今回の転売を容認する経済学と、実際の現場の経営者の判断が違うのは、まさにこのどこを見ているか?の差です。

転売屋であろうと、本当に欲しい人であろうと、どちらでもいいから需要と供給を一致させる価格まで値段を上げろ、というのが経済学的な最大利益の考え方です。実際、企業として売上だけを見るならこれは正しい判断になるでしょう。しかし多くの経営者はこれをしません。その瞬間に売れても、1年後や半年後に同じように売れるとは限らず、それをきっかけにファンが離れていく可能性があるからです。

もちろん、こうした短期的な視点でビジネスを行うことは問題ではありません。貴金属の買取や遺品整理、タピオカ専門店やマーラータン専門店のような流行に乗るタイプの経営者もいます。儲かるところで一気に稼ぎ、儲からなくなったら次の商売に移っていくというスタイルは合理的ですし、違法でもなんでもないのですから。

なぜ経営者は長期で考えるのか。鍵は「LTV」

一方で、何十年と事業を続けていくことを前提にする経営者にとっては、転売ヤーに売って一時的な客単価を最大化するよりも、本当のファンと長く付き合っていくことの方が重要になります。マーケティングの世界で当たり前になっている「LTV(顧客生涯価値)」という考え方も同じで、目先の1万円よりも、10年後にトータルで10万円、20万円を落としてもらえる関係を築く方が本質的な利益につながります。転売する人たちに売っても構わないという判断は、この将来のファン手放すことと同じ意味を持ちます。

ただし「長期で考える」という原則は普遍的でも、「だから転売を防ぐべき」という結論は日本の消費者文化に紐づいたものだという点です。アメリカのように転売が市場として受容されている国では、同じLTVの論理で考えても、転売を防ぐことが正解になるとは限りません。海外でうまくいった手法をそのまま日本に持ち込んでもうまくいかないのと同じで、逆に日本の成功例を海外にそのまま持って行っても機能しないでしょう。日本でX(旧Twitter)が特によく使われているのも、匿名文化との相性の良さが関係していると言われますが、これも他の国では必ずしも当てはまりません。

転売がここまで騒がれるのは日本ならではの文化であるという点は抑えておきたいところです。

まとめ

  • 転売そのものは日本でも違法ではない(チケット類を除く)
  • 経済学的には、転売を容認して需給を一致させることが市場として効率的
  • ただし日本では強い反発が起きる。アメリカなどでは転売は当たり前の市場として機能している
  • 経済学は「その瞬間」の需給を、経営は「3〜5年、時に数十年先」を見て判断する
  • 転売屋に売る=一時的な客単価の最大化。本当のファンを逃す=LTVの毀損
  • ただしこれは日本の消費者文化に紐づく結論。自国の文化を理解した上で判断することが重要

個人的には、1年で大きく稼いで引退する、というのも経営者としての一つの考え方として十分ありだと思っています。

ただ、株式会社キヨスルはお客様やファンの方と長くお付き合いしていくやり方の方が性に合っていますし、日本にも100年以上続く企業が数多くあることを考えると、そちらの方が自分たちの文化にも馴染むのではないかと感じています。

投稿者プロフィール

松本 孝行
松本 孝行代表取締役
兵庫県伊丹市出身

2006年、立命館大学経営学部卒業後、パソコンソフトの卸売会社、総合商社子会社に就職し、2008年に独立。

2011年頃からSEO対策・アフィリエイト用の文章制作から、独学でリスティング広告やアクセス解析、SNS広告などを学び、サービスを展開。

短期大学の情報処理講師や職業訓練校のWebサイト制作クラス・ECマーケティングクラスなどで講師を担当。

現在は株式会社キヨスル代表取締役として、Webマーケティングをデザインすることでクライアントのビジネスに貢献する。
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