AIで作ると成果が落ちる?Netflix CEOが明かした「エンゲージメント70%低下」
Xで少し前にAI生成と見られる飲食店のメニュー画像が、SNSで話題になりました。ご飯の粒が丸くて芳香剤のように見えたり、チーズが異常に伸びていたり、カツの衣が明らかに不自然だったり…違和感というレベルではなく、現実にはありえない見た目になっているものが、実際にポスターとして使われています。
今回はこの話題を入り口に、生成AIをビジネスではどう使うべきかを考えてみます。
消費者はどう受け取っているか
SNS上のユーザーの声を見ると、反応は厳しいものでした。
- 食欲が削られる
- 美味しそうに見えない
- AI画像を使っていると、料理まで手を抜いているように感じる
一部の声ではありますが、少なくともポジティブに受け止めている人はいないでしょう。注目すべきは、画像の印象が料理そのものの評価にまで及んでいるという点です。写真を手抜きすると、商品まで手を抜いていると思われてしまう。これは飲食店にとって決して小さな話ではありません。
そもそも、実際の商品写真を使わずに、あえて画像を生成する必要はありません。担当者や責任者は「これでいいや」と判断して世に出しているわけですが、もう少し使い方を考えないといけないなと思いました
(参考:「食欲が削られる」――AIで作られた“気色の悪い飲食店メニュー”がXで物議 「実物を見たい」の声も - ITmedia NEWS)
同じことが、映像の世界でも起きている
これは画像だけの話ではありません。
中国のショートドラマは、現在95%超がAI製だと言われています。制作コストは実写の4分の1以下、つまり同じ予算で4倍の本数を作れる計算です。安く、早く、大量に作れるようになったわけです。
では、AIに完全移行した結果、何が起きたのでしょうか。
エンゲージメントが70%低下した
中国の大手ショートドラマ企業がAI生成に完全移行したところ、エンゲージメント率が70%低下したという話しがあります。
(参照:Netflixテッド・サランドス共同CEO、AIについて語る | ニュース | IT×エンタメの最前線を届ける | MEDIAMIXI)
70%と言われてもピンと来ないかもしれませんので、具体的に考えてみましょう。
- いいねが100個あったなら、30個になる
- 1万いいねなら、3,000いいねになる。7,000減る
- コメントが100件あったなら、30件になる
単純化すると上記のようなインパクトがあります。しかもエンゲージメントはインプレッション数にも影響しますから、エンゲージメントが落ちるということは、そもそも見られなくなるということでもあります。見られなくなれば広告収入も減りますから、マイナスしか生みません。
投資効率で見ても、当初の5〜10倍から3倍未満まで落ち込んでいます。ヒットする確率も大きく下がっているのは間違いありません。
重要なのは、誰がこの話をしているか
これが一般の中小企業の話であれば、参考程度で済んだかもしれません。しかしこの話を紹介したのは、Netflixの共同CEOでした。インタビューの中で「面白い話がある」として語られたものです。
そのNetflixがどういう会社かというと、こうです。
- 今年すでに約300作品でAIツールを活用している
- AI企業を5.87億ドル(日本円でおよそ800億円)で買収している
つまり、AIに対してかなり先進的で、積極的に使っていこうとしている企業です。そのNetflixが、AIショートドラマでエンゲージメントが落ちているという話を持ち出しているわけです。ここにどういう意味があるのかを考える必要があります。
視聴者が求めているのは、共感と人間性
視聴者にとっては、AIが作ったか人間が作ったかは、本来どちらでも構いません。問題は、共感性や人間性が足りているかどうかです。これが不足していると、エンゲージメントが落ちるのではないでしょうか。
視聴者がドラマに求めているのは、毎日の忙しい現実からの逃避や自分の感情への共感でしょう。現実から離れてファンタジーを楽しみたい、あるいは日常の嫌なことに共感したい、スカッとしたい。こうした要求に対して、AIのストーリー展開や喋り方、動きでは、まだ物足りない部分があるということです。
ただし、AIだからダメというわけではありません。人間が作った作品でも、共感が足りなければ批判は来ます。原作を軽視したドラマ化などが批判されるのは、まさにそこです。
結局はユーザーが何を求めているかという話であり、人間だから必ず分かるというものでもありません。人間でも分からないことはあります。ただ、人間の方がまだ分かる、という程度の話です。
AIを使っていなくても、損をする
広告の調査でも、同じ傾向が出ています。
「AI広告だ」と分かると、良い印象を持たれず、購入意欲が低下します。もちろん非常によくできた画像もあり、AIだと分からないものもあります。しかしAI広告だと認識された瞬間に、購入意欲は下がるのです。
さらに衝撃的なデータがあります。最大7割の人が、実写の広告をAI広告だと誤認しているというのです。
つまり、AIを使っていなくても、AIっぽく見えるものは損をするということです。実写であっても、AIっぽく見えてしまう写真はあります。
今はAI画像が増えてきたため、ユーザーはまず「これはAIかな、どうかな」と考えるようになっています。いずれはもっとシームレスになっていくと思いますが、現時点ではAIかどうかが引っかかる要素になっているのです。
(参考:AI画像広告は生活者に受け入れられるのか?~生成AIを活用した広告クリエイティブへの生活者の反応を分析|VR Digest plus メディアとビジネスのミライを見つめる。 | ビデオリサーチ)
問題は「AIで作ったか」ではなく「AIっぽく見えるか」
AIで作ったかどうかは、正直なところ問題ではありません。弊社もAIで画像生成をしていますし、バナーも作っています。
大事なのはAIっぽく見えるかどうかです。AIっぽく見えるとユーザーは嫌がります。であれば、ユーザーのことを考えるなら「これは本当にAIっぽく見えないか」を、表に出す前に一度チェックしなければなりません。
本当の問題は、「これでいい」と判断したこと
そして最も大事なのは、なぜあれを「良い」と判断したのかという点です。「これでいいや、出してしまえ」と判断して世に出してしまいました。ここに問題があります。
一般の人やお客様に見せて「どう思いますか」と聞いたのでしょうか。知り合いでも、ご家族でも構いません。誰かに見せて、率直な反応をもらったのでしょうか。メニュー写真などどうでもいいと思っているのか、仕事だから手を抜いてもいいと考えているのかは分かりません。ただ、そういうことをするとユーザーは冷めてしまいます。
ユーザーにとってプラスになる、良いと思ってもらえる…そうでない限り、良い反応は返ってきません。お客様のことをきちんと考えていれば、ああはならないはずなのです。お客様目線を忘れていないでしょうか。ここが最も懸念される部分です。
弊社の場合
弊社も生成AIをかなり使っています。画像も使いますし、レポート作成にも使います。
ただし大事にしているのは、それをユーザー目線に合わせることです。お客様に対しては必要な指標以外はややこしくなるので、使わないようにしています。もちろん求められたらその情報をお渡ししますし、お客様ごとにレポート内容はカスタマイズしています。
AIが言ったからそのまま使う、ということは原則していません。 AIも完璧ではありませんし、私も完璧ではありません。AIの指摘に「なるほど」と思うこともあります。AIの意見も含めて、お客様と打ち合わせの中で話し合い、結論を出すようにしています。
まとめ
- AI生成のメニュー画像が「食欲が削られる」「料理まで手を抜いているように感じる」と批判されている
- 中国のショートドラマは95%超がAI製。制作費は実写の4分の1以下
- AIに完全移行した大手企業では、エンゲージメントが70%低下(いいね100個が30個になる規模)
- この話を紹介したのは、300作品でAIを使い、AI企業を800億円規模で買収したNetflixの共同CEO
- 視聴者が求めているのは共感と人間性
- 最大7割が実写広告をAI広告と誤認。使っていなくてもAIっぽければ損をする
- 問題は「AIで作ったか」ではなく「AIっぽく見えるか」
- そして最大の問題は、「これでいい」と判断してしまったこと
AIを使うこと自体は、まったく問題ないと考えています。ただしAIを使う理由が重要です。お客様にとってプラスになるから使う、この意識を持つべきではないでしょうか。
効率化されて楽になるから使う、という方は多いと思います。私もそうです。しかし楽になった結果、お客様のためにならなくなったら本末転倒です。AIを使い、かつお客様のためになる状態を保ち続けなければなりません。
AIでいろいろなシステムやサービスを作る人が増えましたが、それは本当にお客様のことを考えて作られているのでしょうか?AIを使うと、かえってユーザー目線を忘れてしまうのかもしれません。マーケターとして、またビジネスをやる上で必要なことですから、忘れずにいたいと思います。
投稿者プロフィール





