「メンパ」という言葉を知っていますか?コスパ・タイパの次に来る第3の物差し

「メンパ」という言葉をご存知でしょうか。コスパ、タイパに続く第3の物差しとして提唱されている新しい言葉です。

(参考:タイパの次は「メンパ」 選択しない、居心地優先、新消費トレンド:日経クロストレンド

今後どれくらい定着するかはまだ分かりませんが、この言葉が示している消費者の変化は、今後のマーケティングを考えるうえでヒントになります。今回はこの「メンパ」を入り口に、今の消費者がどう行動しているのかを見ていきます。

コスパ、タイパ、そしてメンパへ

コストパフォーマンス(コスパ)は昔からある考え方で、若い世代が意識するようになる以前から、ビジネスの世界では重視されてきました。

タイムパフォーマンス(タイパ)は、令和に入ってから広く使われるようになった言葉です。時間に見合う価値があるかどうかを重視する考え方で、YouTubeを2倍速で見る、前奏の短い音楽が流行る、といった現象がその表れです。

そして今、日経BPが提唱しているのが「メンパ(メンタルパフォーマンス)」です。精神的な負担があるかないか、という観点です。ゲームでいうMPのようなもので、仕事でもプライベートでも精神的な余力は削られていきます。それがゼロになると動けなくなってしまうので、そうならないように心の余裕を持つことが今後は重要になるのではないか、という提唱です。

メンパとは「買い物で心が削られないこと」

具体的には、買い物や消費の場面で心が削られないことを考えるのがマーケターとしては重要です。

例えばオイシックスやナッシュのような食品宅配サービスはメンパが良いと考えられます。毎日3食の献立を考えるのは、実はかなり大変な作業です。これは「決断疲れ」と呼ばれるもので、あらかじめ選ばれたものが届くサービスを使えば、判断そのものをしなくて済み、精神的な余裕が生まれます。

選択疲れを防ぐ工夫は昔からありました。定食屋の「日替わり定食」がずっと人気なのも、選ぶのが面倒だからです。その日のものが自動的に決まっている、という点に価値があるわけです。

もうひとつが「失敗したくない」という心理です。行動経済学でよく言われるように、人間は1万円をもらう喜びよりも、1万円を失う痛みの方を強く感じます。だからこそ後悔しない、失敗しない選択を求めます。

さらに現代は情報が多すぎます。朝起きてから寝るまで、スマートフォンを見ているだけでも「この動画を見るべきか」と判断し続けている。だからこそ「心が削られないこと」に価値が生まれるというわけです。

データで見ると、矛盾する2つの数字が出てくる

では実際に、今の人はどう行動しているのでしょうか。セイコーが発表している「セイコー時間白書2026」に興味深いデータがあります。

まず、タイパを意識して行動している人は約6割になります。「タイパ重視の考え方は社会に定着した」と感じている人も65.8%と、やはりタイパ意識は根強く残っています。

ところが同じ調査で、「何もしない時間を大切にしたい」という人が56.1%と過半数を超えています。しかもこれは、10年間の調査で過去最高の数値です。

何もしない時間は、コスパで見てもタイパで見ても、時間を無駄に使っているように見えます。この相反する2つの項目が、どちらも半数を超えていることがポイントです。

答えは「同じ人が使い分けている」ということ

人間は相反する感情を同時に持っているものです。好きでもあり嫌いでもある、といったことは珍しくありません。タイパも大事にしたいし、何もしない時間も欲しい。この矛盾した願いを、同じ人が内に秘めているわけです。

つまり、場面によって使い分けているのです。効率化したい時間と、効率を求めない時間を分けているのです。同じ調査によると、63.6%の人がこの使い分けをしていると回答しています。

タイパ離れが起きているのではありません。同じ人の中に、2つのモードが同居しているということです。

企業が考えるべきは「顧客が今どちらのモードか」

これをビジネスに転用すると、顧客が今どちらのモードなのかを見極める必要がある、という話になります。

ここで重要なのは、これは企業側がモードを決める話ではないということです。手間を徹底的に省いて早く簡単に終わらせる領域もあれば、あえて時間をかけて価値を丁寧に説明する領域もあります。しかし、どちらを提供するかを企業が選ぶのではなく、お客様が場面によって勝手に切り替えているのですから、それを見る必要があるのです。

これを取り違えると、間違った価値を提供してしまいます。さっと終わらせたい人にこだわりを長々と話せば「コスパもタイパも悪い」と思われますし、じっくり選びたい人に対して効率化してしまうと、その人にとっては体験が悪くなります。どちらも良かれと思ってやっているのが厄介なところです。

飲食店で考えると分かりやすい

もっと分かりやすい例が飲食店です。

牛丼、カレー、うどん。吉野家、すき家、ココイチ、丸亀製麺といったお店でランチをするとき、私たちはコスパとタイパを見ています。限られた昼休みの中で、いかにスピーディーに、安く、満足できるか…このような価値提供が求められます。

逆にフレンチレストランやしっぽりとした居酒屋では、メンパの方を求めます。ゆっくり時間を過ごし、料理とお酒と会話を楽しむのです。2時間程度の時間をかけて楽しみます。コスパ・タイパは確かに悪いかもしれませんが、精神的な満足度は非常に高い、メンパが良いと言えるでしょう。

これを逆にすると大変なことになります。牛丼屋で30分も45分も待たされ、コースのように出てきたら満足できません。逆にフレンチや居酒屋で、食べた瞬間に皿を引かれたら、焦ってしまって居心地が悪くなります。

自社の接点ごとに、モードは混在していい

弊社の場合で言えば、問い合わせ・見積もり・申し込みへの対応はタイパ寄りと言えるでしょう。見積もりはできるだけ早く出した方がいいですし、問い合わせが来たらすぐに返事をします。ここはスピードが価値になります。

一方、定期的なミーティングや「次はどういうことをやっていきましょうか」というご提案の場面では、1時間ほどかけて丁寧に議論します。ここは時間やコストをあまり気にせず、じっくりディスカッションすることで価値を生む部分だからです。

つまり、ひとつの会社の中に2つのモードが混在しているわけです。そしてそれは当たり前のことで、お客様の状況に合わせてモードを切り替えていくのが良いでしょう。

まとめ

  • コスパ、タイパに続く第3の物差しとして「メンパ(メンタルパフォーマンス)」が提唱されている
  • メンパとは、買い物で心が削られないこと。決断疲れや失敗のリスクからの解放を指す
  • タイパ意識は約6割と根強い一方、「何もしない時間を大切にしたい」も56.1%で過去最高
  • 63.6%の人が、効率化したい時間と効率を求めない時間を使い分けている
  • 同じ人の中に2つのモードが同居しているため、企業側が決めるのではなく、顧客が今どちらを求めているかを見極める
  • ひとつの会社の中でモードが混在していて構わない

メンパという言葉自体が今後定着するかどうかは分かりません。ただ、この言葉が示唆しているのは「タイパ・コスパだけの時代ではない」ということです。そしてタイパやコスパを重視している人の中にも、あえてそれらを気にしない部分があります。これも人間の持つ両面性なのだと思います。

「何もかもを効率化すればよい、というのは違う」ということだけは、押さえておきたいところです。

投稿者プロフィール

松本 孝行
松本 孝行代表取締役
兵庫県伊丹市出身

2006年、立命館大学経営学部卒業後、パソコンソフトの卸売会社、総合商社子会社に就職し、2008年に独立。

2011年頃からSEO対策・アフィリエイト用の文章制作から、独学でリスティング広告やアクセス解析、SNS広告などを学び、サービスを展開。

短期大学の情報処理講師や職業訓練校のWebサイト制作クラス・ECマーケティングクラスなどで講師を担当。

現在は株式会社キヨスル代表取締役として、Webマーケティングをデザインすることでクライアントのビジネスに貢献する。