人はAIに取って代わられるほど合理的ではない
「AIに仕事が奪われる」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。実際、AIの発達によりどんどん効率化が図られています。それは良い事ですが、はたして本当に仕事を奪われるほどなのでしょうか?そのキーになるのが「効率的・合理的」というワードです。
人は合理的・効率的よりも損をしない事を選ぶ
まず、どうして「AIに仕事が奪われる」と考えるのでしょうか?これには「人は最大限の効率化をするだろう」という大前提があるからです。例えば、1km先のコンビニと100m先のコンビニ、あなたはどちらに行きますか?効率的な100m先のコンビニを選ぶだろうと思います。これは効率的に動いているためです。
ですが現実を見た時、人はそんなに効率的に動いていません。例えば、安い商品を求めて遠くのスーパーに回る人は多いかもしれませんが、はたしてこの行動は効率的でしょうか?もちろん1円でも安い商品を手に入れたいと思うのは当然ですし、経済的にもお得です。しかし自転車や車などで時間・体力・交通費をかけて回る事は合理的に考えると効率的と言えないのではないでしょうか。
また職場1つを取っても効率的に動けない場面はたくさんあります。未だに電子ではなく紙で対応している会社もあるし、インターネットが使えない・メールが使えない金融機関も多くあります。このように人も組織も合理的・効率的に行動しているとは言い切れません。
実は人は合理的・効率的に動けないという論が行動経済学で判明しています。
例えば「得することと損しないこと、どちらを取るか?」と言った実験が有名です。サイコロを振って出目が奇数なら100ドル受け取れますが、偶数なら100ドル支払うゲームでは、「やらない」と言う人が過半数になるのです。つまり「得をする」よりも「損をしない」事を選ぶ人が多かったのです。
また、人はサンクコスト(使ってしまった戻らないコスト)を取り戻そうとする傾向がある事も分かっています。例えば1万円で購入した家電が思っていた物と違った時、新しい物をすぐに買うのではなく、その1万円を取り戻そうと購入した家電を長く使う傾向にあります。もちろん長く使っても1万円が戻ってくる訳ではありませんが、1万円分を使い切ろうという考えになるのです。効率や合理性を考えれば、新しいものに買い替えたほうがよいかもしれないのに、です。
このように人はできるだけ「損をしない」ことを強く考えていますので、合理的・効率的に動くとは言えないのです。
人は感情で動く
人が合理的・効率的に行動しないのは、感情があるからだと考えられます。例えばECサイトに関する統計によると、ある日急に思いついて商品・サービスの購入をする人がいることが報告されています。ですがこれは衝動買いをしているのではなく、今までずっとその商品を調べているのです。例えば新婚旅行について調べていた夫婦がある日ピタッと調べなくなり、自分達の生活が落ち着いてくるとまた調べ出し、急に申し込みをします。これをパルス消費と言います。
またインフルエンサーマーケティングはまったく合理的ではありません。インフルエンサーがお勧めしていたから買うと言うのは、感情に基づいて行われる行動です。誰かが良いと言っていたから大丈夫だろうと思う訳です。口コミへの高い信頼性もまさにこれで、誰かが良いと言っていたからと失敗・損をしない方を選択しています。
人には感情がありますので、合理的・効率的な選択肢を分かっていても選ばない事もあります。なのでAIに仕事が奪われる事はあまり現実的ではないでしょう。