その「コンバージョン」、本当に見込み客ですか?

Google広告やGA4のレポートを見て、「今月はコンバージョンが100件、まずまずだな」と判断する…よくある場面だと思います。

ですが、その100件の中身を最後に確認したのは、いつでしょうか。

問い合わせフォームには、見込み客だけが来るわけではありません。SEO営業、M&Aの提案、人材紹介、ツールの売り込み…それらも「フォーム送信」であることに変わりはないため、多くの場合そのままコンバージョンとして1件カウントされています。

この記事では、フォームに届く営業メールがコンバージョンに混ざることで何が起きるのか、そしてご自身のサイトでその実態を確認する手順を整理しました。ツールの導入なしで、今日から確認できる内容です。

「コンバージョン100件」の本当の中身

仮に、今月のコンバージョンが100件あったとします。その内訳を開けてみたら、68件は営業メールやスパムで、本物の問い合わせは32件しかなかった——という状態はBtoB企業を中心に、よく見られる状態です。

ここで問題になるのは、単に「営業メールがうっとうしい」ということだけではありません。「Google広告の自動入札は、この100件すべてを「成果」だと思って学習する」ということです。つまり、営業メールを送ってくる人に似たユーザーへ向けて、広告配信を強化していきます。

逆に、営業メールを除いたうえでコンバージョンを計測すると、数字の上では「32件に減る」ように見えます。ですが、この32件はすべてが本当に必要としている問い合わせなはずです。つまり、自動入札も本物の見込み客だけを見て機械学習するようになります。

Information

上記の件数は説明のための例です。実際の比率は業種やフォームの設置場所によって大きく変わります。後述の手順で、ご自身のサイトの数字をご確認ください。

reCAPTCHAを入れていても防げないもの

問い合わせフォームのフィルタリングについては、「うちはreCAPTCHAを入れているから大丈夫です」という方が多いのではないでしょうか。

たしかにreCAPTCHAや迷惑メールフィルタは、次のようなものはしっかり防いでくれます。

reCAPTCHA・迷惑メールフィルタで防げるもの

  • プログラムによる自動送信(bot)
  • 同一文面の大量配信スパム
  • 既知の迷惑メールリストからの送信

それでも防げないもの

  • 人が手で入力して送ってくる営業メール
  • 実在する企業の、正規のメールアドレスから届く提案
  • 1通ずつ内容を変えて送られる売り込み

人が手で送ってくる営業は、技術的にはスパムではありません。だからこそ、reCAPTCHAも迷惑メールフィルタも素通りします。そして、コンバージョンとして計上されます。

ここが、この問題の起点です。フォームのセキュリティ対策と、コンバージョンの純度は、別の話だとお考えいただくのがよいと思います。

混ざったコンバージョンが生む3つの損失

損失内容
① 時間の損失問い合わせだと思って開いたら営業だった。毎朝の仕分け作業が発生し、本当に大事なメールが埋もれてしまう。
② 判断の損失コンバージョン数もコンバージョン率も営業メール込みの数字になる。その数字を見て「今月は良かった」と判断しても、意思決定の根拠にはなりにくい。
③ 広告費の損失自動入札が「営業メールを送ってくる層」に最適化され、予算が誤った方向へ配分され続ける。

いちばん厄介なのは③です。③は表面上の数字に現れないことが厄介な部分です。

管理画面のコンバージョン数は、むしろ増えて見えます。だから「コンバージョン数は順調だな」と感じ、問題に気づけません。「数字は良いのに、なぜか成約につながらない」という感覚だけが残る、という状態になりやすいところです。

なぜ広告費が「静かに」無駄になるのか

順を追うと、次の3ステップで広告費が無駄に消費されていきます。

  1. 営業メールがフォームから届く
    前述のとおり、人が手で送るものはreCAPTCHAでは防げません。
  2. コンバージョンとして計上される
    フォーム送信、またはサンクスページ到達を成果に設定している以上、送信者が誰であっても1件です。
  3. 自動入札がそのデータで学習する
    Google広告の自動入札は、コンバージョンを教師データとして使います。営業メールが混ざっていれば、機械は「こういう人が成果になる」と営業メールのユーザーについて学習します。

結果として、営業メールを送ってくる層に似たユーザーへの配信が強化されていきます。CPAは悪化しますが、その原因は管理画面には表示されないのです。

見かけのCPAと、実質のCPA

数字にすると、影響の大きさが分かりやすくなります。以下は説明のための例ですが、7割近くが営業メールだった場合です。

見かけのCPA実質のCPA
広告費1,000,000円1,000,000円
件数コンバージョン 100件本物の見込み客 32件
CPA10,000円31,250円

問題は、この31,250円という数字がどこにも表示されないことです。管理画面やレポートには10,000円としか出てきません。その10,000円を基準に、キーワードを増やしたり、予算を足したりという判断をしてしまうことになります。

※ 上記の数値は説明のための例です。営業メールの割合が低ければ差は小さくなります。

【実践】自社サイトの実態を確認する4ステップ

ここまでは一般論です。大事なのは、御社のサイトで実際にどうなっているかです。ツールを導入しなくても確認できますので、お時間がある時に下記手順で確認してみてはいかがでしょうか。所要時間は、問い合わせ件数にもよりますが30分〜1時間ほどです。

STEP 1|期間と母数を決めて、通知メールを数える

まず、集計する期間を決めます。直近1〜3か月くらいがおすすめします。1週間だとブレが大きく、半年以上さかのぼると手間が増えるためです。

その期間の「フォームからの通知メール」をメールソフトで抽出します。フォームの自動送信メールには件名に決まった文字列(「お問い合わせがありました」など)が入っていることが多いので、それで絞り込むとよいでしょう。

抽出できたら、次の3つに分類して件数を数えます。

  • A:本物の問い合わせ(自社のサービスについての相談・見積り・資料請求)
  • B:営業・売り込み(他社からの提案。SEO、制作、M&A、人材、ツールなど)

この時点で「A、B、Cそれぞれ何件か」と「合計何件か(母数)」をメモしておきます。この母数と期間をセットで記録しておくことが重要です。後で比較するときに、期間が違うと意味のない比較になってしまうためです。

STEP 2|有効問い合わせ率を出す

本物の問い合わせと合計件数で「有効問い合わせ率」を算出します

有効問い合わせ率= A(本物)÷ 合計件数

この1数字が、以降のすべての判断の土台になります。

STEP 3|実質のCPAを計算し直す

Google広告の管理画面で、STEP 1と同じ期間の広告費とコンバージョン数を確認します。そのうえで、次の2つを比べます。

  • 見かけのCPA = 広告費 ÷ 管理画面のコンバージョン数
  • 実質のCPA = 広告費 ÷(管理画面のコンバージョン数 × 有効問い合わせ率)

厳密には「広告経由の問い合わせ」だけを分母にするのが正確ですが、まずは全体の比率を掛けるやり方で十分に傾向はつかめます。

もし実質のCPAが、社内で許容している上限を超えているようであれば、その広告は「効いていない」のではなく「効いているかどうか分からない状態」だと考えたほうがよいかもしれません。

STEP 4|Google広告のコンバージョン設定を確認する

最後に、広告側の設定です。Google広告の管理画面で、[目標]→[コンバージョン]→[概要]から、コンバージョンアクションの一覧を開きます。ここで見るのは2点です。

  1. 何をコンバージョンにしているか
    「フォーム送信」「サンクスページ到達」のみであれば、営業メールも含めてカウントされていることになります。
  2. 「目標に含める」がオンになっているか
    オンになっているコンバージョンアクションが、自動入札の学習に使われます(表示上は「メイン」「サブ」と表記されます)。オンのものに営業メールが混ざっていれば、それがそのまま入札の教師データになっています。

※ Google広告の管理画面は表記や導線が頻繁に変わります。上記の名称が見つからない場合は、近い名称を探してみて下さい。

確認したあと、何ができるか

実態が分かったうえで取れる手は、大きく3つあると考えています。

1. レポート上で補正する(すぐできるが根本解決ではない)

有効問い合わせ率が分かっていれば、月次レポートに「実質CPA」の欄を1つ足すだけでも、社内の意思決定の精度は上がります。コストはかかりません。

ただし、これは人間の判断を正すだけです。自動入札の学習データは汚れたままなので、広告配信そのものは改善しません。

2. フォーム側で減らす(効果は限定的)

「営業目的のご連絡はお断りしております」という一文を添える、必須項目を増やす、といった対策です。多少は減る場合がありますが、手で送ってくる相手には効きにくいというのが実感です。また、項目を増やしすぎると本物の見込み客の離脱も増えるため、やりすぎには注意が必要です。

3. 判定して、コンバージョンから除外する(根本解決)

営業メールを判定し、本物の問い合わせだけをGA4やGoogle広告にコンバージョンとして送る、という方法です。ここまでやると、自動入札の学習データそのものが正されます。

ポイントは、キーワードや送信元アドレスによるルールベースのフィルタでは限界があることです。人が手で書いた文章は、1通ずつ言い回しが違います。除外ワードを増やしていくと、今度は本物の問い合わせまで巻き込む可能性が出てきます。本文の内容から判断する仕組みが必要になります。

まとめ:数を増やす前に、数える対象を正す

「コンバージョン最適化」という言葉は、しばしば「コンバージョン数を増やすこと」という意味で使われます。ですが、数を追いかけるほど、営業メールも一緒に増えていきます。

本来必要なのは、コンバージョンの中身を正すことではないでしょうか。正しい見込み顧客だけを抽出して、コンバージョンとしてカウントする…中身が正しくなれば、広告の学習も、社内の判断も、自然と正しい方向へ向かいます。

数を増やす前に、数える対象を正す。

まずは、この記事のSTEP 1だけでも試してみることをおすすめします。直近1か月分の通知メールを分類するだけで、御社のコンバージョンの実態がひとつの数字になります。想像していた数字と違っていた、というケースは少なくありません。


動画でも解説しています(約29分)

この記事の内容は、セミナー形式の動画でも解説しています。CPAの計算例や、GA4・Google広告への連携の考え方については、動画のほうが詳しく触れています。

営業メールの判定を自動化するツールを開発しています

弊社では、フォームに届く問い合わせをAIで判定し、本物の見込み客だけをGA4・Google広告にコンバージョンとして送る「MinukuForm」というツールを開発しています。この記事の課題は、私たち自身が広告運用の現場で課題となっていたことでもあり、開発を行ったものです。

現在、無料のテストモニター企業様を募集しています。モニター期間中の利用料は無料で、自動的に料金が発生することはありません。「自社のコンバージョンの何割が営業メールだったのか」を数字で確認したい方は、下記をご覧ください。

MinukuForm 公式サイト(無料テストモニター募集中)

投稿者プロフィール

松本 孝行
松本 孝行代表取締役
兵庫県伊丹市出身

2006年、立命館大学経営学部卒業後、パソコンソフトの卸売会社、総合商社子会社に就職し、2008年に独立。

2011年頃からSEO対策・アフィリエイト用の文章制作から、独学でリスティング広告やアクセス解析、SNS広告などを学び、サービスを展開。

短期大学の情報処理講師や職業訓練校のWebサイト制作クラス・ECマーケティングクラスなどで講師を担当。

現在は株式会社キヨスル代表取締役として、Webマーケティングをデザインすることでクライアントのビジネスに貢献する。